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日銀からヘッジファンド、投資銀行への大きなハロウィン・ギフト

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏が10月30日の米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿したコラム「日本への謝罪」が日本でも報じられた。クルーグマン氏が世界金融危機後の欧米経済や金融政策を踏まえ、かつて日本の政策を批判したことを謝罪したという趣旨の報道がなされた。

クルーグマンの謝罪の真意とは

 同紙電子版で原文を改めて読むと、彼は、日本銀行の金融緩和の拡大を事前に知っていたか、少なくとも予想していたうえで、コラムを書いた可能性を指摘できる。なぜなら原文の最後に、次のようなことを書いているからである。

 ――現在、日本で起きていることについて、近くさらに書くことになるだろう。

 私の読み違いでなければ、クルーグマン氏は、日本銀行が金融緩和の拡大を織り込んでコラムを書いたのだろう。日本にも関心を持つノーベル経済学賞受賞者は決して多くはない。私の勝手な想像ではあるが、そうしたクルーグマン氏なら情報源から示唆を受けることも難しくないだろう。

 私も久しぶりに直感的に動いていた。先週から今週にかけて、もともと東京と関西で連続して予定が入っていた。地方在住の私には珍しいタイトな日程だったが、急きょ、外資系投資銀行にヒアリングを依頼した。多忙なヒアリング先が貴重な時間を提供してくれた。10月31日午後1時開始の面会だった。ちょうど面会中、日本銀行が金融緩和の拡大を発表した。

 「この時期になると市場が下落する傾向があるんですよ。投資銀行の年末ボーナスを決める時期だから、経営陣が市場を支えたがらない」。そんな業界内の冗談を聞かされた。

 10月、11月のマーケット急落で、メディア取材に対して合理的な説明に困る市場パターン(アノマリー)の時、「ヘッジファンドの決算期が近いため、換金売りが出やすい」とマーケットエコノミストやストラテジストがコメントすることがある。思い込みは禁物と、大金を瞬時に動かすヘッジファンドにも近いヒアリング先に聞いてみた。

アジアの中で再び注目される日本

 こんな回答が返ってきた。「確かに大きな(ヘッジ)ファンドで何本かの決算期はいまも11月末です。全体のファンドを調べたわけではありませんが、顧客はファンド期末の45日前までにファンドに対して解約を通知するルールがあります。ヘッジファンドの決算期というより、顧客の都合が影響するのかもしれません。顧客は、クリスマス休暇中の市場の下落だけは避けたいところです(クリスマスくらいは部下やファンドへの連絡で忙殺されたくない)。だから期末要因とコメントしても間違いではないのでしょう」

 次に日本市場が注目される要因をいくつかあげてくれた。米国連邦準備制度(FRB)がリーマンショック後の3回目の量的緩和(QE3)を終了することを発表した直後だった。このタイミングで、アジアの中で日本が再度、注目される可能性があるとの見立てでは一致していた。

 世界の株式投資家はこれまでリターンを上げるには米国株に投資をすればよかった。ただFRBが時間をかけるとはいえ、 ・・・ログインして読む
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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

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