原田泰(はらだ・ゆたか) 原田泰(早稲田大学教授)
早稲田大学教授。1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、2012年4月から現職。「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「世界経済 同時危機」(共著)「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)「デフレはなぜ怖いのか」「長期不況の理論と実証』(浜田宏一氏他共著)など、著書多数。政府の研究会にも多数参加。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
多くのエコノミストは、今年4月の消費税増税について以下のように考えていたと思われる。
「消費税は完全に転嫁されるから、消費税の物価に与える影響は、物価をただ2%余計に上昇させるだけである。もちろん、物価上昇によって家計の実質所得は減少するから、その分、実質消費を押し下げる。しかし、物価に及ぼす効果は、上記の直接効果であって、実質消費の減少が需要を減退させ、物価を引き下げる間接効果は、無視できる程度である」
しかし、本当にそう言い切れるだろうか。
5%から8%への消費税増税の消費者物価指数に与える影響が2%というのは、消費者物価指数の対象品目のうち、消費税が課税されるものは消費税が完全に転嫁され、課税されないもの(その主要なものは帰属家賃である)には変化がないとして単純計算した結果である。
しかし、税が完全に転嫁されるのは、供給曲線が水平な場合のみである。現実には、供給曲線は多かれ少なかれ右上がりだから、必ず転嫁は不完全になる。
供給曲線が右上がりであれば、2%の増税は2%の価格上昇とはならず、需要者が負担する分と供給者が負担する分の価格上昇に分けられる。それがどのような配分になるかは、需要曲線と供給曲線の価格弾性値による。
価格弾性値が分からない時、通常であれば、それは半分ずつであるととりあえず仮定しても良いだろうが、この場合には需要の弾力性は小さいと仮定すべきだ。なぜなら、