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米中間選挙・共和党勝利が決定づけたTPP交渉の方向

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 

 アメリカの中間選挙で共和党が連邦議会上院の多数を占め、上下両院とも、共和党が多数を占めることになった。両院のねじれが解消された。

中間選挙での民主党敗北を受け記者会見するオバマ大統領=ワシントン、ランハム裕子撮影 中間選挙での民主党敗北を受け記者会見するオバマ大統領=ワシントン、ランハム裕子撮影

 民主党と異なり、共和党は自由貿易に積極的である。選挙中、上院共和党のリーダーであるミッチ・マコネル院内総務は、「オバマ政権とは、是々非々で仕事をする。貿易自由化には協力する。」と述べていた。

TPAを獲得する米政府

 選挙前は難しかったが、ようやくアメリカ政府は、通商交渉権限を持っている連邦議会から権限を授権してもらうTPA(大統領貿易促進権限法)を獲得できるだろう。

 オバマ政権にとっては野党が勝利することで、政権が推進しようとしているTPP交渉が前進することになる。TPP交渉を始め、貿易自由化交渉に民主党が積極的だったことは少ない。労働組合を支持母体とする民主党は、海外から安い商品が入ってきて、雇用が損なわれるとして、自由貿易には否定的だった。TPP交渉については、オバマ政権と与党民主党の間にねじれがあったのだ。

 TPP交渉は、TPAを獲得した後の、来年前半に妥結すると考えられる。大統領選挙はその翌年の2016年である。来年はアメリカにとって選挙もなく、特定の業界に不利益を与える自由貿易協定でも、選挙を心配しないで妥結することが可能だからである。しかも共和党中心の議会なので、議会の承認を得ることは難しくない。他方で、共和党中心の議会となると、

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