小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)
長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
内閣府が、消費税再増税についてヒアリングするため、有識者・専門家を集めた「今後の経済財政動向等についての点検会合」が18日、終了した。朝日新聞によると、45人のうち31人、つまり68%が賛成意見を述べた。昨年の点検会合よりやや慎重派が増えたという。
金融機関系を中心とする民間エコノミストも債券担当や日本銀行出身者が多くを占めており、賛成多数は前回の論考「相次ぐ地銀統合と消費税10%延期解散の急浮上」でも事前に指摘した。巨額の国債残高を前にして、2014年7─9月期の国内総生産(GDP)が前期比・年率で2期連続でマイナスとなったことは、有識者らの見解にはほとんど影響しなかった。
個別の見解では、財政制度等審議会会長を務める吉川洋・東京大学教授は「瞬間風速としての短期的経済動向に拘泥すべきではない。消費税とは別にしかるべき景気対策を講ずる」と明快である。他方、再増税反対派は、アベノミクスの優先課題がデフレ脱却であることを強調した。筆者も同様の意見である。
・点検会合資料:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken2014/
安倍政権の戦略は明確である。「経済」で内閣支持率を確保しながら、集団的自衛権、日本国憲法改正など政治的な改革を最重要課題として据えている。ここが政策決定分析の要(民間エコノミストが好む経済政策としてのあるべき論とは別)である。カタカタ職種でいえば、ストラテジストの視点である。
エコノミストの視点で補完すれば、増税後6カ月の実質GDP成長率(1次速報値)で、1年後の増税を判断するのはもともと乱暴な話だった。2次速報値でマイナス幅が縮小することもありうるだろう。また再増税すれば、前回より小さいとはいえ再び駆け込み需要と反動減が起きる。
日本はキリスト教国ほど年末に個人消費が集中するわけではないが、