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消えたバターの秘密

乳製品を一元的に輸入する国の機関と国内の酪農保護で抑制される輸入

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 バターが不足している。安いバターは普段の倍も値上がりしており、洋菓子店の業界ではバターからマーガリンやショートニングに切り替えた店もあるという。

 農林水産省は、昨年の猛暑の影響で乳牛に乳房炎等が多く発生したことや、酪農家の離農等で乳牛頭数が減少していることなどにより、生乳(=搾ったままの牛の乳)の生産量が減少したためだと説明している。

 ある報道では、酪農家の離農が止まらない最大の原因は、生乳の価格が上がらず、酪農家の経営が苦しいためだという。また、内外の酪農政策に詳しいという大学教授の意見を紹介して、牛乳の値段が上がらないのは、大手スーパーなどの買い手側が価格決定の主導権を握っており、牛乳が安売りの目玉となり、値崩れしやすいこと、アメリカやカナダでは酪農家の生産コストをカバーする政策があるのに、日本の飲用牛乳にはそのような政策がないためだとしている。

酪農家の離農は以前から続いている

 しかし、酪農家の離農は、今に限ったことではない。酪農家の経営が極めて好調だった1990年頃や2000年頃でも酪農家の離農はあった。酪農家の戸数は1963年の42万戸から2000年には3万にまで大きく減少し、それからは微減で現在2万戸となっている。

 大手スーパーなどのバイイングパワーも今に始まったことではない。しかも、

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