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第5回 中野剛志・評論家(上) 

財政破綻もハイパーインフレもありえない

大鹿靖明 朝日新聞経済部記者

 安倍政権は、来年10月に予定されていた10%への消費税の再増税の是非を有権者に問うことを大義名分に衆議院の解散総選挙に踏み切った。政権発足当初からリフレ政策をとり、順調にきたかに見えた経済運営だが、4月の8%への消費税増税を機に経済は失速。仕切り直しと政権への求心力浮揚を狙って解散に打って出た感が強い。選挙で問われる最大の争点はアベノミクスだ。20万部を超える『TPP亡国論』の著者である評論家の中野剛志氏にアベノミクスへの見方を聞いた。2回に分けて紹介する。(インタビューは2014年11月20日)

 

 ――衆議院が解散・総選挙されることになり、消費税の10%への再増税は予定されていた2015年10月から2017年4月に1年半ほど延期されることになりそうです。

中野剛志氏拡大中野剛志氏

 こうした経済情勢の中にあって、私は来年10月に予定されていた消費税の再引き上げをすべきではないと思っています。有識者を招いた「今後の経済財政動向等についての点検会合」で過半数の有識者が「消費税を上げても経済的なダメージはそれほど大きくない」「駆け込み需要の反動減も一時的なものであって大した影響はない」などと言うのを聞いて、非常に驚きました。そもそもデフレ不況のときに増税してよいという理論はこの世にありうるのかと思います。デフレ不況のときに増税するというのは経済政策の基本から逸脱していると思いますよ。

 ――リフレ派の方々とその点は同じですね? なぜデフレ下で増税してはダメでしょうか。

 私はそもそもデフレ下の財政赤字拡大を悪いこととは思っていないんです。日本が財政破綻するとも考えていません。そもそも財政再建を優先する考え方に疑問をもっています。たしかにこの限りにおいてはリフレ派と見解は一致します。

 私は、金融緩和だけでは効果がなくて、財政出動をやった方がデフレ脱出には効果があるという意見です。リーマン・ショック後の英国や米国を見ると、金融緩和だけでは景気回復や雇用回復は不可能で、財政出動が必要、もっと端的に言えば財政赤字の拡大を辞さないという覚悟で取り組まないと景気は回復しない――ということが明らかになりました。ローレンス・サマーズやジョセフ・スティグリッツといった経済学者や、『大恐慌の教訓』を著したピーター・テミンという大恐慌の研究家も同じ趣旨のことを言っており、一流の経済学者ではもはやコンセンサスの考え方ではないかと思っています。

 安倍政権は確かにそれまでとは異なる政策に踏み切り、金融緩和をし、今回は追加緩和までしました。財政出動も当初は積極的で最初は13兆円の補正予算を組み、次いで14年4月に5兆円の経済対策を講じましたが、消費税増税によって約8兆円分も消費者から購買力を奪ってしまった。消費税の増税は恒久的に購買力を奪う格好になるので、一年だけ数兆円の対策を打ったとしても、全体としては緊縮財政の方向です。緊縮財政では景気がよくなるわけがなく、景気が悪化して税収は減ります。

 したがって増税では財政再建はできないんです。むしろ財政支出を増やして公共投資を増やし、経済成長を図るべきです。

 そもそもデフレ不況だと、 ・・・ログインして読む
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筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。

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