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「ドクターX」人気と総サラリーマン社会ニッポン

リスクをとれない環境で本格的な起業家教育や育成は可能か

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 権力争いに執着する勤務医らに対して、「私、失敗しないので」と言い切る女性外科医のドラマが20%台の視聴率を稼ぎだしている。テレビ朝日系ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』である。銀行の上司らに対して「土下座して詫びてもらいます」、「やられたらやり返す、倍返しだ」と突きつけた昨年のTBS系銀行員ドラマ『半沢直樹』も、出世競争に明け暮れる銀行組織や、金融庁検査の矛盾をリアルに表現してヒットした。

 ひと昔前のドラマでいえば、フジテレビ系の刑事ドラマ『踊る大捜査線』(1997年放送、プロデューサーは亀山千広・現フジテレビ社長)も、警察官僚組織のノンキャリア(織田裕二が演じた青島俊作など)と、キャリア(柳葉敏郎が演じた室井慎次など)と組織のヒエラルキーの問題も扱っていた。「事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起きているんだ」や、「あんたは上に行け、俺は現場でがんばる」などの名セリフを残している。

 現実には、ドラマの視聴率分析はメディア論、社会学が得意とするところであるものの、経営学から見れば、この二つのドラマは明らかに組織のヒエラルキーを扱っている。今回は、あえて戦後の雇用統計の推移からドラマの人気の背景を説明することを目的とし、最後に総選挙や地方選挙も見据えた考察を試みる。

低下を続ける自営業主の割合

 では、経済統計のうち雇用統計でドラマの背景を説明してみよう。

 総務省の労働力調査によると、日本では自営業主が確実に減少している。戦後、1950年代の日本は4人に1人が自営業主((図1)で、家族従業者も含めると半数を超えていた。さて、ハナ肇とクレージーキャッツが「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」と歌ったのは1962年に発表された「どんと節」である。

 このころになると自営業主は5人に1人の割合に低下している(家族従業者を含めると40%台)。プラザ合意で円高が急伸した1985年で、就業者に占める自営業主の割合は15.8%だった(家族従業者を含めると25.4%)。

 その後、就業者総数のピークは1997年の6557万人に迎える。橋本首相時代で、消費税が3%から5%に引き上げられ、山一証券、三洋証券、北海道拓殖銀行が破たんした年である。アジアでは香港が中国に返還され、アジア通貨危機が起きている。

 同年では自営業主の割合は11.8%と2桁を維持していたものの、自営業主の割合は2006年には10%を割り込み、2013年度平均値で8.8%である(家族従業者を含めると11.5%)。これは農業など一次産業を含む全国統計のため、大都市圏ではさらに自営業主の割合は低い。

 会社に勤務する勤め人、いわゆるサラリーマンが増えている。1997年以降の変化に絞ってみても、

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