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2014年末の大波乱、原油価格の急落と世界経済

OPECが仕掛けた「逆石油ショック」、シェールガス潰しは成功するか

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 2014年の世界経済は、年末の土壇場に大波乱が待っていた。主因は1バレル=100ドル超で安定していた原油価格が、突然するすると50ドル台まで下落したこと(グラフ1)。世界の株価や資源国通貨も乱高下し、混乱のうちに1年の幕を閉じようとしている。

拡大グラフ1

 国内では、ガソリン価格は急激な円安のせいでドルベースほどには下がらず、恩恵は帳消しになった。

 原油下落のきっかけは、欧州や中国・新興国が不景気で、世界的に需要が減ったことだ。ところが11月下旬に開かれたOPEC(石油輸出国機構)総会は、価格維持を図るどころか、むしろ減産を拒否して価格下落を容認した。

 主導したのはOPECの盟主サウジアラビア。ロイター通信によると、サウジのヌアイミ石油相は内々、「米国のシェールガスに対抗するため、この際、生産業者の収益を圧迫すべきだ」と宣言し、他の中東アフリカ産油国も賛同したという。要するにシェールガス潰しである。

 シェールガスの米国での生産量はウナギ上りだ(グラフ2)。画期的な採掘技術が開発され、2012年には米国の天然ガス生産量全体の4割を占めるまでになった。コストが安いので、米国にとって製造業復活の切り札になっている。

拡大グラフ2

 しかし、サウジはじめとする産油国側は、シェールガスを放置すればエネルギーに占める原油のシェアが減り、石油収入は減少、国家財政も悪化する。中東アフリカ地域での政治的影響力もじり貧になる。シェールガスへの危機感はとても強い。

 OPEC総会で下落を容認した効果はすぐ出てきた。わずか1か月の「兵糧攻め」で、新興のシェールガス企業は利益が減って財務状況が悪化し、新規投資が滞ってきた。シェールガス企業が発行した社債は値下がりし、操業停止や事業中止に追い込まれる企業が現れてきた。

 この状態があと1~2年続けば、相当数のシェールガス企業がふるい落される可能性があるが、産油国側にもベネズエラのように財政が苦しい国がある。今回の価格戦争が「チキンレース」と言われるゆえんだ。

 産油国が戦いを挑んでいる相手は、シェールガスの他にも多々ある。例えば省エネルギー、再生可能エネルギー、脱炭素化(水素社会)、原子力発電、

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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