メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

今夏発表される財政再建計画を世界が注目する理由

希望的観測を並べて、財政の現実を隠す罪は深い

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 2015年夏、政府は財政再建に向けた重要な計画を発表する。「20年度に基礎的財政収支(PB、)を黒字化する」というのが国際公約であり、それを実現するための道筋を明らかにするのだ。安倍首相も消費増税10%の先送りと引き換えに、計画策定を約束している。

グラフ1

 右のグラフ1は、内閣府が2014年7月に発表したPBの予測である。今後10年間の平均成長率が実質2%(名目3%)という極めて順調な「経済再生ケース」でも、20年度のPBはGDP比マイナス1.8%で、PB黒字化(右上赤い丸)とのギャップ(赤字額)は11兆円もある。実質1%(名目2%)という普通の「参考ケース」では、マイナス2.9%(16兆円)に達する。

 2つのケースとも消費税率を15年秋に10%に上げることが前提だったから、それを延期した今、PB黒字化の公約達成は更に困難になっている。

 20年度に生じる11兆~16兆円のギャップを、もし、すべて消費税の引き上げで賄おうとすれば、税率を5~8%引き上げて15~18%にすることが必要になる。昨年末の総選挙では10%の是非が焦点になったが、とてもそんな税率では収まらない。

 逆に歳出カットだけで上記の金額を減らそうとすると、社会保障費(29兆円)の2分の1、地方交付税交付金(16兆円)の全額、文教・科学・公共事業・防衛費合計(15兆円)の全額をカットするという、ほとんどありえない選択になる。

 長年、税収不足を国債発行で穴埋めする財政運営を続けた結果、

・・・ログインして読む
(残り:約2184文字/本文:約2824文字)