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成長戦略の試金石となった農協改編の行方

佐賀県知事選で敗れても強気を崩さぬ安倍首相の本気度

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 農協改革が、安倍政権第三の矢の試金石となってきた。安倍首相が、本当に岩盤規制にドリルを開けることができるかどうか、内外の注目が集まっている。

骨抜きにされた株式会社化

 政府の規制改革会議は2014年5月、次のような農協改革案を実現しようとした。

 第一に、農協の政治活動の中心だったJA全中(全国農業協同組合中央会)に関する規定を農協法から削除する。政治力を削ぐとともに、末端の農協への指導・監査権限を弱める。

 第二に、全農やホクレンなど連合会の株式会社化である。協同組合の連合会という理由で、独占禁止法が適用されないことを利用して、全農等は高い資材価格を農家に押し付け、日本農業の高コスト体質を作り上げ、最終的には高い食料品価格を消費者に強いている。株式会社になれば、独占禁止法を適用できる。

 これは、農協の意向を忖度せざるをえない自民党によって、完全に骨抜きされた。全中は新たな制度に移行するが、「農協系統組織での検討を踏まえ」る。全農の株式会社化も、単なる選択肢の一つとなったうえ、「独占禁止法が適用される場合の問題点を精査して問題がなければ」株式会社化を促すとされた。判断するのは、JA農協だということになった。

 2014年11月、JA全中が公表した自己改革案では、地域農協に対する全中の監査という大きな権限は維持するとともに、全中などの中央会を農協法に措置することが重要だとした(全農やホクレンなどの株式会社化については、検討を先送りした)。予想された通りである。

強気を崩さぬ安倍首相

当選が決まり、支持者と握手を交わす山口祥義氏(中央)=2015年1月11日夜、佐賀市拡大当選が決まり、支持者と握手を交わす山口祥義氏(中央)=2015年1月11日夜、佐賀市

 しかし、安倍首相は同年6月、「中央会は再出発し農協法に基づく現行の中央会制度は存続しない。改革が単なる看板の掛け替えに終わることは決してない」と発言している。

 さらに、佐賀県知事選で農協がバックアップした候補に自民党候補が敗北した直後の、2015年1月16日にも、「地域の農協を主役として、農業を成長産業に変えていくために、全力投球できるようにしていきたい。その中において、中央会(農業協同組合中央会)には脇役に徹していただきたい」と発言し、強気の姿勢を崩さない。

 政府は、JA全中が地域の農協を監査・指導する権限を廃止する方針で、今月下旬からはじまる通常国会に関連法案を提出したい考えだが、全中や自民党の農林族議員たちは、強く反発している。農協の機関紙である「日本農業新聞」は、安倍政権との全面対決姿勢を鮮明にしている。

強制的な監査権限を農協法で規定するのか

 特に、焦点となっているのは、全中が地域農協に対して行う強制的な監査権限を、引き続き農協法で規定するかどうかである。論点を整理しよう。

 第一に、JA全中会長が強調するように、農協は自主自立の組織である。そうであれば、地域農協が自主的な判断で必要と感じた場合には、一般社団法人となった全中に、自主的に監査を依頼すればよいだけであって、農協法に規定する必要はない。

 また、公認会計士と全中のどちらに監査を依頼するかは、

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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