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経済学の基本を無視するデフレ理論が根強い不思議

「人口デフレ論は誤り。低成長率はインフレ要因になる」と経済学者はなぜ言わないのか

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 人口が減るからデフレになる、成長率が低いからデフレになるという議論がいまだに根強いことに驚く。素人がどう議論しようが仕方がないが、経済学者が明確に否定しないからいつまでも残ることになるのだろう。なぜ経済学者が明確に否定しないのか不思議である。

 世界でもっともひろく使われているマンキューの経済学入門の教科書-日本でもかなりひろく使われている-でも、この2つのデフレ理論は明確に否定されている。

経済学では、人口デフレ論は落第

 翻訳の方でいうと下巻の第15章応用問題の9.に「以下の出来事がそれぞれ短期の総供給曲線や総需要曲線をシフトさせるかどうか説明しなさい。曲線をシフトさせる出来事については、図を用いて経済に対する影響を示しなさい(影響を示すとは、生産と物価がどうなるかを答えなさいという意味)」とあって、出来事の3番目に、「海外での就職の機会が増えたために、多くの人が海外へ移動した」というのがある(マンキュー『経済学IIマクロ編[第3版]』東洋経済新報社、2014年、521頁)。

 人が海外に移動するとは、人口が減少するのと同じである。答えは、「人口が減れば需要も供給も減る。生産は減るが、物価が上昇するか下落するかは総供給曲線と総需要曲線がどれだけシフトするかによるから、分からない」である。

 答えは「分からない」だが、常識的に考えると、

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