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[2]日本の医療は世界一なのか(2)

過度な商業主義は深刻、診療の質を担保する仕組みの導入を

井伊雅子 一橋大学国際・公共政策大学院教授

 日本の医療分野は、複雑な規制と制度が現場を縛っているというイメージがあり、「市場原理を導入すれば効率化できる」、「民間の活力をもっと生かすべきだ」という主張をよく聞きます。「成長戦略として、医療、労働、農業の岩盤規制の改革を進める」といったニュースもよく耳にします。

拡大OECDの報告書の表紙

 医療に関しては、効率性や創意工夫のために自由にすべき領域もありますが、実は、行政の政策的な介入が少ないために世界でも類を見ない自由放任主義的な医療提供体制になっています。

 例えば、都市では民間病院を始め、国公立病院、大学病院、保険者立病院など設立母体(*)の異なる病院が乱立し、各病院が最新の医療機器、高度先進医療機器を自由に競って配置しています。病院だけでなく診療所も重装備になり、多くの専門診療科を標榜しているところも多いです。診療科目は各医療機関が自由に選ぶことが出来るからです。

 過剰に導入されている最新の医療機器の資金回収と利益を求めて患者の奪い合いが生じており、一人の患者がいくつもの病院や診療所を回り、それぞれで重複した検査や投薬を受けるということもまれではありません。

 非営利と称しながら、日本の自由放任主義的な医療は、過度に商業化されつつあります。医学知識のない一般の人が、インターネット、メディア、ベストセラーの本などの情報に振り回されて、

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筆者

井伊雅子

井伊雅子(いい・まさこ) 一橋大学国際・公共政策大学院教授

一橋大学国際・公共政策大学院教授。国際基督教大学教養学部卒業、ウィスコンシン大学マディソン校経済学部博士課程修了,博士号取得(Ph.D., Economics)、世界銀行、横浜国立大学経済学部助教授、一橋大学国際企業戦略研究科教授を経て2005年から現職。NHK経営委員、政府税制調査会委員。一般向けの小論に「日本の患者は幸せか? —医療経済から見たプライマリ・ケアの重要性—」(藤原書店『環』vol.56, 2014)、「医療の在り方を経済学で模索する」(日経文庫『身近な疑問が解ける経済学』, 2014)

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