メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

就活学生を困らせる小手先の採用「改革」

グローバル・スタンダードである通年採用に変更できないのか

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 2016年春に大学を卒業する学生を対象とする就職、採用活動が3月1日に解禁された。

就職活動が解禁され、各企業のブースに集まった大学生らは真剣な表情で説明を聞いていた=2015年3月11日午前、大阪市住之江区

 日本経団連が昨年9月に改定した「採用選考に関する指針」によれば、「学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始を自粛する」として、会社説明会などの「広報活動」は「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」とし、面接などの「選考活動」は「卒業・修了年度の8月1日以降」とすることが決められた。「正式な採用内定」を出せるのは、「卒業・修了年度の10 月1日以降」とされている。

 しかし、このような建前を本気で守ろうとしている企業はほとんどないということを教員や学生たちは知っている。「建前を信じ込んで学業に専念していたら、就職活動で損をするのは私たちでしょう」という声が学生たちの間で聞かれる。

 教員や学生たちの間では、企業の実質的な採用内定には、3つの「ヤマ」があるだろうという見方も出ている。

 第一のヤマは今年の4月から6月にかけて。「選考の8月解禁」を待たずに学生たちを積極的に囲い込もうとする企業群が出す「内定」だ。外資系はもちろん、経団連や政府の顔色など気にせず実利を優先するタイプの企業は、指針などしょせんは紳士協定にすぎないと割り切っているのである。

 第二のヤマは、7~8月。メガバンクや商社など経団連の中核である大企業が実質的な採用内定を学生たちに伝えるとみられている。「正式な内定は10月以降だが、間違いなくあなたを採用する」というふうに表向きは「指針」を守るふりをしつつ、

・・・ログインして読む
(残り:約1103文字/本文:約1762文字)