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リフレ政策に反対する民主党は誰の味方か?(下)

景気を良くする方策を持っていなければ政権は担当できない

吉松崇 経済金融アナリスト

中央銀行の通貨発行益(シニョレッジ)とは?

 原田氏批判のポイント第二点は、「日銀が物価目標を達成したときに、(債券価格が下落して)日銀が含み損を抱える可能性があるが、財務の健全性は大丈夫か」という記者の質問に対し、原田氏が「日銀は国債をただで買っている。例えば10兆円の国債をただで買って、将来2兆円の含み損が出ても8兆円の儲けがあるので問題ない」と答えたことにあるようだ。大久保議員は「このような打ち出の小槌がある訳はなく、原田氏の経済・金融の識見に疑問がある」と批判する。

拡大衆院予算委で質問に答える日銀の黒田東彦総裁。右端は安倍晋三首相=2014年10月3日午後

 日銀が国債を殆どただで買っているのは事実である。例えば、日銀が国債を利回り1%で銀行から購入するとしよう(現在の国債の利回りは、10年債で約0.4%、20年債で約1.2%である)。日銀の支払い対価は、この銀行が日銀に持っている準備預金に払い込まれる。日銀は現在、金融機関の準備預金に対し0.1%の金利を払っているが、日銀が購入した国債からは1%の金利を受け取る。そうすると、この差の0.9%は日銀の利益となる。

 「日銀がただ同然で国債を買っている」というのは、日銀の負債サイド、つまり日銀券と準備預金には殆どコストがかからない、ということである。これは、国債と日銀券の違いを考えれば直ぐにわかる。国債も日銀券も日本政府の負債であるが、国債は金利を払いながら、なおかつ、満期には(日銀券で)返済しなければならないが、日銀券には金利もなく満期もない。だからこそ、日銀券の発行に通貨発行益(シニョレッジ)が生まれる。これは政府が中央銀行にだけ認めた特権なので、日銀の純利益は国庫に納付される。打ち出の小槌は存在する。金融のプロである大久保議員は通貨発行益(シニョレッジ)をご存じないのだろうか?

 さて、日銀が2%の物価目標を達成すると、確かに長期金利は上昇するだろう。金利が上昇すれば国債の価格は下落するので日銀は含み損を抱えることになる。「財務の健全性は大丈夫か?」という記者の質問は理解できる。だが、これは含み損であり実現損ではない。日銀のバランス・シートに一度入った国債は満期まで日銀のバランス・シートに滞留して、満期には新たに発行される国債に振り替わるだけである。つまり、損失は永遠に実現されない。

 このように答えると、「それではインフレ率が目標を超えて上昇したときに、金融引き締めが出来ないではないか?」との反論があるだろう。これがいわゆる金融緩和の出口論である。多くの人、とりわけ債券市場の関係者は、金融引き締めが必要になったときに、日銀が保有する大量の国債を市場で放出するので大混乱が起きるのではないか、と恐れている。

 だが、市場で放出しなくても金融引き締めの方法はある。日銀の負債サイドである準備預金の金利を引き上げれば良い。極論すれば、

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『労働者の味方をやめた世界の左派政党』 (PHP新書、2019年)、『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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