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21世紀の資本主義の行方

不平等の是正には所得の再分配政策の強化が必要

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

講演するトマ・ピケティ氏

 トマ・ピケティの「21世紀の資本」が内外で話題を呼び、様々な論争が繰り広げられている。

 ピケティ理論の核心は資本の収益率(r)がつねに経済成長率(g)を上回り、これが資本と労働の格差を生み、資本主義の構造的矛盾を拡大するというものだ。ピケティは過去3世紀にわたり20ヵ国以上のデータを収集しこの結論を導き出している。

 たしかに過去300年の平均を見れば、rは4~5%で推移したのかもしれないが、21世紀に入って、多くの先進国で資本の収益率、利潤率は急速に低下している。この結果、先進国では軒並み利子率が低下し、日本とドイツでは10年国債の金利は0.5%を切り、アメリカでも2%強まで下がってきている。

 これは資本投資が行きわたり、実物資産のGDP比が1を越え、日本等では2倍を超えてきているからだ。そうなると、追加的投資による資本収益率は当然低くなってしまう。

 18世紀~19世紀には収益率はピケティのいうように高かったのかもしれないが、第二次世界大戦後、資本所得は日本を始め多くの先進国で急速に減少している。過去300年の平均を第二次世界大戦後の先進国、特に日本に当てはめるのは無理というものだろう。

 ピケティの「21世紀の資本」がこれ程までに注目されるのは、その分析フレームゆえではなく、

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