リスクを伴う積極運用は成功するか
2015年03月17日
海外勢を中心に、世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)への関心が高まっている。2014年12月末現在で保有資産は137兆358億円、米国最大の連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)の運用資産の3倍にものぼり、一般会計の歳出を上回る規模である(図1)。
日本銀行とともに国債の主要な引き受け手となってきたGPIFに対して、海外の資産運用会社や年金コンサルタントの関心が高いのは、海外株式投資や不動産投資に運用方針を変更するためである。こうした投資対象の手数料率は国債より高い。
国民にとっては、GPIFの運用利回りが1%向上すれば、消費税の0.5%に相当するだけに、新生GPIFの成否は、社会保障の給付と負担にも深く関係する。日本銀行出身の理事長の任期が3月末に切れるため、後任人事にも関心が高まっている。
GPIFは、国民や雇用主に代わって年金資産を管理・運用する公的年金基金である。団塊の世代の退職を控えても、政府と国民は、年金の大幅減額や受給年齢の引き上げで合意できていない。1970年代、年金財政(賦課方式)は、勤労世代6人で退職世代1人を支えていた。だが、現在では、勤労世代1.7人で退職世代1人を支えている。
公明党が2003年の衆議院選挙で「年金100年安心プラン」というマニュフェストを公表、その後、政治家や厚生労働省やGPIFの一部外部委員は「100年安心」を口にしているものの、国民には、世代間の不公平感、継続性への不安、収入の伸び悩み、非正規雇用の拡大などを背景として、年金の未加入や未納問題を抱えている。2014年の国民年金保険料の納付率(1年間前月分納付)は58.8%にとどまっている。
自民党は2008年、国家戦略本部に「SWF検討プロジェクトチーム(座長:山本有二前金融担当相)」を設置して、外貨準備や年金の積極活用を検討していた。福田康夫政権下だった。時代背景は、中国が外貨準備を原資とする政府系ファンド(SWF)を立ち上げ、米国サブプライム・ローン問題が顕在化し始めていた。その後、民主党政権でいったんお蔵入りした積極運用政策がアベノミクスで息を吹き返してきた。
厚生労働省の2014年財政検証では、8種類のケースを長期の経済前提として、消費者物価上昇率を0.6%から2.0%、実質利回りは1.7%から3.4%としている。2009年財政検証では、3種類のケースで、消費者物価上昇率は1.0%、実質利回りを2.9%から3.2%とした。2014年経済前提の名目利回りのうち、2009年の中位値を超えたのは5種類である。黒田東彦総裁下の日本銀行も、
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