不当解雇の金銭解決制度、「残業代ゼロ」法案で見えなくなる違法状態におかれた働き手
2015年04月13日
政府は3月27日、不当解雇の金銭解決制度の導入を検討することを表明、職場復帰の道が一段と狭まることを懸念する声が強まっている。
安倍晋三首相は同じ日の参院予算委員会で、「影響力の大きい企業が違法な長時間労働を繰り返している場合には、是正を指導した段階で公表する必要がある」と述べ、ブラック企業名の公表という罰則強化策を示した。
政府の方針が、働き手の権利の縮小なのか、それとも違法企業への規制強化なのか、という疑問を説くカギがある。「違法企業の改善から労働法の”改善”へ」という補助線を引くことだ。
不当解雇の金銭解決の検討は規制改革会議の提言を受けたもので、小泉政権時代から労働側の猛反対の中での攻防が続いてきた。
いまの制度では、裁判で不当解雇との判決が出た場合、職場復帰が原則だ。いまでも職場復帰の代わりに金銭解決で決着させることはできるが、職場復帰の原則をテコに、解決金交渉を有利に進めることもできる。ところが金銭解決が公式に導入されると、働く側は金銭解決の選択を迫られやすくなるばかりか、職場復帰をテコにつかいにくくなり、解決金相場はもっと下がるおそれさえあるというのが、労働側の懸念だ。
そもそも職場復帰が原則とされてきたのは、働き手は職場を選べないという現実があるからだ。家族がいて仕事のある地域へ移動できなかったり、地域の産業が少なくて選択肢が狭かったりすれば、次の仕事が見つからず、貧困に転落しかねない。
これを防ぐため、金銭解決が一般的と言われるデンマークでは、解雇による退職前に次の職場が見つかるようハローワークにあたる公的機関と7割近い組織率を誇る労組が協力して解雇者を手厚く支援し、そのために多額の税が支出される。また、労組が交渉して次の仕事に必要な職業訓練費を解雇企業に出させることもある。
2009年に取材した際、デンマークの大手労組の担当者は「解雇が簡単な国と聞いて各国から視察が相次いでいるが、切れ目ない転職のために多額の税金をかけていると知って、みんながっかりして帰っていく」と苦笑していた。
デンマークなどの試みは、
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