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大学生活とスマートフォンの相性

情報化時代の大学で使用を制限する矛盾をどう考えるか

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 信州大学の山沢清人学長が4日の入学式で、「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」と新入生らに語ったことが、ネット上を中心に大きな注目を集めた。スチーブ・ジョブズが率いたアップルがiPhoneを2007年6月に発売してからほぼ8年。山沢学長の発言は、その普及と浸透によって大学教育の場が変質してきていることを浮かび上がらせてもいるようだ。

 日本など先進国だけではなく新興国でも、若者を中心にスマートフォン(スマホ)の普及度は高い。すでに成熟市場になりつつあり、最近ではApple Watchなどウェアブル端末が投入されている。一方、文部科学省は小学校、中学校、高校には、携帯電話は教育活動に直接必要のない物として、禁止や制限を通知している。

 意外なことに、スマホを広めたジョブズが、自分の子どもたちにはハイテク使用を制限していたことがニューヨーク・タイムズで報じられている。大学では、一律に授業中の使用禁止と教員の判断に委ねると2派に分かれている。新入学シーズンにあたり、大学における情報端末使用の実態についてまとめてみる。

スマホの普及度が高いアジア諸国

 まずスマホの普及度を確認したい。グーグル(The Connected Consumer Survey 2014)によると、日本は46%で、調査対象56カ国・地域のうち31位である。上位にはシンガポール(85%)、韓国(80%)、アラブ首長国連邦(78%)、サウジアラビア(77%)、スウェーデン(75%)、香港(74%)が並ぶ。その他、中国(70%)、台湾(67%)、マレーシア(51%)と、アジア諸国の高さが目立つ(図1)。

 この調査は原則として16歳以上を対象にしているが、日本は20歳以上を対象にしているため、過小になっている可能性もある。他方、総務省の通信利用動向調査では、スマホの世帯普及率は2013年の49.5%から2014年には62.6%に上昇している。より広い概念の携帯電話の世帯普及率はそれぞれ94.5%、94.8%に及んでいる。

 スマホの普及につれて、多機能携帯電話や高機能携帯電話のカッコ書きが不要になった。念のためデーターベースで確認すると、日本経済新聞は2013年6月25日、朝日新聞は2014年5月15日、地方新聞などにニュースを配信する共同通信は2014年6月13日が分岐点になっている。多機能や高機能の代わりにスマートフォン(スマホ)の表記が定着している。

文科省は小学校、中学校には原則禁止を通知

 文部科学省が都道府県教育委員会教育長らに、「学校における携帯電話の取扱い等について」の通知をしたのが2009年1月30日である。小学校および中学校に対しては、「携帯電話は、学校における教育活動に直接必要のない物であることから、

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