矛盾だらけの総合企業、安倍政権との融和・和解はあるか
2015年04月15日
全国農業協同組合中央会(全中)の万歳(ばんざい)章会長が4月9日、辞任を表明した。いくつかのマスコミから私はコメントを求められた。正直なところ、私としては、あまりコメントしたいものではなかった。引責辞任であることは明らかだろうし、これに追い打ちをかけるようなことはしたくなかったからである。
安倍政権の農協改革に、全中は敗北した。JA農協組織の中でも、農協改革を受け入れたことに反感が強い。
全中元専務で参議院議員の山田俊男氏が、与党の自民党議員であり、農協改革法案を審議する参議院農林水産委員会の委員長であるにもかかわらず、TV番組で、公然と今回の農協改革を批判している。これまで一糸乱れない統制をとってきたJA農協組織に亀裂が走った。
政権側の完全な勝利だった。農家ではない准組合員の事業量を規制するという見せ球を投げることで、兼業農家などから集めた預金の多くを准組合員への住宅ローンなどで運用している地域農協は動揺した。准組合員の事業規制を逃れられるなら、全中はどうでもよいという気持ちになった。構成員である地域農協に背を向けられたJ中は孤立した。
しかし、これは全中の敗北というより、これまで農協には一切手をつけられてこなかったから、負けなかっただけのことである。
・農業の協同組合なのに正組合員を准組合員が75万人も上回るという矛盾
・利用者がコントロールするというのが協同組合の原則なのに、利用者の准組合員には議決権がないという矛盾
・肥料流通の8割を押さえるなど巨大な独占事業体であるにもかかわらず、これに独占禁止法は適用されないという矛盾
・巨大事業体なのに中小企業並みの法人税率が適用され、さらには固定資産税さえ免除されているという矛盾
・下からの運動体なのに、トップダウンのピラミッド型組織となっている矛盾
上記のように、JA農協組織は矛盾に満ちた総合企業である。弱点を突こうとすれば、いくらでも突けた。歴代の政権が農協の政治力が怖くて手をつけようとしなかっただけのことである。
しかし、冷静に考えると、なぜこの時期に辞任を表明するのかという疑問がある。辞任の理由について、萬歳会長は
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