ジャーマンウイングズもアシアナもエアバス機、操縦室でいったい何が起きているのか
2015年04月16日
ジャーマンウイングズ社のエアバスA320が3月24日、南フランスの山中に墜落した。4月14日には、韓国アシアナ航空のA320が広島空港で着陸に失敗する事故を起こした。前者はパイロットの「自殺」が原因だとする見方が流布され、後者は現時点ではパイロットが低く滑走路に進入したためとされている。
他にもA320は、昨年12月にはマレーシアのエアアジア機がインドネシア沖で墜落、今年3月にはエアカナダ機がカナダ・ハリファクス空港で着陸に失敗するなど、このところ事故が相次いでいる。
航空機事故のヒューマンファクターを長年研究してきた佐久間秀武・ヒューファクソリューションズ代表取締役は、一連の事故についてエアバス特有の自動操縦システムとの関連性に注目する。その見解を参考にしつつ、筆者なりに考察してみよう。
昨年12月、欧州航空安全局(EASA)はエアバスA320ファミリー(A318、319、320、321)、A330シリーズ、A340シリーズを運行する航空会社に、ある緊急指令を発した。「アルファ・プロテクション」というエアバス独自の失速防止装置で発生した不具合への対応策で、対象となる航空機は全世界で数千機にも上った。
この装置は、パイロットが機体を上昇させる際に操縦桿(写真1)を引き過ぎて(機体の角度を上げ過ぎて)逆に失速しないよう、角度を自動的に制限する働きをする。
ところが、あるA320で、本来働くタイミングではないのに装置が勝手に作動。機体は機首を下げてどんどん降下を続け、墜落しかねない非常事態になった。事故は免れたが、EASA自身、現時点でもまだ原因を突き止めていない。
EASAの緊急指令は、アルファ・プロテクションの不具合再発に備えて、パイロットがそれを解除する手順を示している。
しかし、エアバスは「人間(パイロット)の指示を極力排除してコンピューターの判断を優先する」という技術中心の設計思想で作られている。それを解除する手順は面倒で、パニックに陥っているパイロットが冷静に対応するのは簡単ではなさそうだ。
こうした経緯から、ジャーマンウイングズ機墜落の一報を聞いた専門家は、同機が9分間降下し続けた点に注目して、「同じ異常事態が再発したのではないか」と疑ったのである。エアバス社も同じだっただろう。
ところが事故のわずか2日後、NYタイムズの特報に続いて、仏マルセーユ地方検察庁が記者会見し、早々とボイスレコーダーの解析結果として副操縦士の「自殺」説を示唆する発言をした。
「自殺」説の判断材料は筆者にはないが、会見の時点では飛行データを記録したフライトレコーダーはまだ捜索中だった。航空事故調査当局の公式発表もないうちに、素人の地方検事がこうした発言をするのは訝しい話だ。
エアバスはフランスに本社を置く欧州最大の国策企業であり、不振の欧州経済を支えている。エアバスの生産工場があるドイツからも、副操縦士のパソコンの個人情報が次々流されてくる。自動システムの問題から世間の目をそらす意図があるのではないかと疑いを持たれても仕方がない。
ところで、ジャーマンウイングズが保有するA319は昨年8月、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください