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中国主導のAIIB参加は重要イシューなのか

政治・経済的な費用と便益を冷静に分析する必要性

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 「人民元高になれば、海外旅行でこれまで以上の買い物ができるのです」

 中国のシンクタンク研究員や大学教員によると、定期的に中国政府や中国共産党幹部に説明するときは、これくらいわかりやすい表現で、人民元高や人民元国際化の意義を説明するのだという。「人民元高は輸出企業にマイナス」という固定概念を払しょくするための努力と言える。

日本とは違うスピードと構想力

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーが15日、57カ国になることが決まった。AIIBはもともと、北京大学と中国政府系シンクタンク社会科学院が、習近平政権の経済政策として提案したものと報道されている。日本における政策提案との違いは、スピードと世界規模の構想力である。中国の政策形成はむしろ、米国と比較して論じるべきものだろう。

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 このAIIBに対するジャーナリズムの関心は高い。そしておそらく、世界金融危機後のG20の役割、IMF増資問題、TPPなどとともに、国際関係論や政治学者が事例研究として注目するテーマになるのだろう。中国が国際社会での存在感を示した点では現状では、「北京」が期待した以上の成果をあげたと言えるのかもしれない。

 とくに今年3月、英国がAIIB参加を表明して以来、多数の言説がなされてきた。我々の研究グループも今年末を目標に、アジア経済に関する書籍を刊行する予定である。昨年末の編集会議で、司会役を引き受けていると、ベテラン研究者から、必ずAIIBを含めるようにとの強い提案を受けた。

 少し時代をさかのぼると、日本もアジア通貨危機直後、榊原英資財務官時代に、アジア通貨基金(AMF)を提案したほか(米国と中国が反対)、黒田東彦財務官時代に、アジア域内の通貨スワップ(チェンマイ・イニシアティブ)を提案、実現させている。

 AMF提案時代、日中の財務官僚間の信用網が細い(もしくは無いに等しい状態)という反省もあったのだろう。その後、財務省は、若手官僚の中国語圏への留学を本格化させ、日中間の実務者レベルの会合などの努力もみられるが、中国が圧倒的な経済力を背景に、アジアを超えて世界的な発言力を増していく。他方、日本政府は小泉政権と安倍政権を除いては政権の寿命が短く、国際金融をめぐる選択肢は限られていった。

中国除外のTPPと日米除外のAIIB

 霞が関(外務省よりは財務省が関係すべきテーマである)や政治家にとって、AIIBに参加するのかどうかは、重要な問題ではあることは想像できる。しかし様々な言説に触れても、参加の意義が伝わってこないでいた。そのなかで、環太平洋経済連携交渉(TPP)との比較の視点はわかりやすい。

 貿易・サービスは1995年、国際貿易機関(WTO)が創設されたが、合意形成に時間もかかるため、 ・・・ログインして読む
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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

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