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[6]頑張れ!国内男子ゴルフツアー(下)

男子ゴルフ界の抜本的な組織改革が望まれる

山口信吾 ゴルフ作家

プロゴルファーは過酷な職業

 国内男子ツアーの昨季の賞金ランキング上位10名のうち、20代の選手は29歳の池田勇太ただひとり。一方、女子ツアーの上位10名のうち、20代が8名を占める。女子ツアーでは、昨季3勝した22歳の成田美寿々をはじめとする若い選手が活躍しているうえに、勝みなみ他のアマチュアで活躍する次の世代も順調に育っていて話題性もある。一方、有望な若手男子プロやアマチュアの話題は聞こえてこない。男子プロの顔ぶれはマンネリ化している。

女子プロのスイングを間近に見るのは大いに参考になる。全体重を左足に乗せて完璧に振り切っている

 若手の男子プロが育っていないのには理由がある。プロゴルファーになるには若いときから練習やラウンドや道具に大きな費用がかかる。「資格認定プロテスト」を受けるだけでも100万円以上かかるうえに、合格するのは至難の業である。運よく合格して「トーナメントプレーヤー」という称号を得ても、すぐにトーナメントに出場できるわけではない。クォリファイングトーナメント(QT)を戦って上位に入らないと、翌年のツアー出場権は得られないのだ。

 シード選手になっても、一握りの選手を除いて、人もうらやむ賞金を手にできるわけではない。予選落ちすれば一切賞金はもらえず、練習ラウンドと予選出場にかかった費用は持ち出しとなる。一打が賞金額に直結し、獲得賞金は翌年の「職場」を確保できるかどうかを左右する。一見華やかに見えるプロゴルフの世界は過酷だ。

 昨季20試合に出場して賞金ランキング78位でぎりぎりシード権をとった深堀圭一郎が手にした賞金額は約1千万円である。だが、税金(100万円まで10%)やJGTOに納める特別会費4%、試合出場の必要経費600万円(一試合約30万円)を差し引けば、手元に残るのは260万円ほどにすぎない(副収入はあるだろうが・・・)。プロゴルファーには年金や失業保険などの福利厚生も退職金もない。サラリーマンになったほうがましだと考える人がいても不思議ではない。

 このような厳しい実情を知れば、プロゴルフの世界を目指す運動能力に恵まれた若者は少ないだろう。男にはいずれ家族を養わなければならないという自覚があるからだ。本人が希望したとしても、スポンサーから高額の契約金をもらえそうな天才少年でない限り親が反対するであろう。

 組織上の深い問題

 国内男子ツアー低迷には、もっと深い組織上の問題があるように見える。JGTOには17名もの役員がいる。その内訳は、中央官庁からの天下りが3名、マスコミ関係者が4名、上部団体の兼務役員が4名、スポンサー企業の代表者が1名、プロゴルファーが5名である。役員会には企業経営に長けた常勤役員は見当たらない。

 JGTOの会長は、今年81歳になる日本放送協会(NHK)の首領であった人物である。さらに、元NHK幹部が理事兼事務局長を務めている。日本オープン選手権の共催者であり実況生中継をしているNHKが、JGTOの中枢を握っているように見える。

 JGTOとLPGAの役員構成と比べると、

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