メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

2020年にもネット広告費がテレビ広告費を抜く

ネット時代のNHKと民放のすみ分けめぐる議論を

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 NHKの籾井勝人会長の言動や、過剰な演出、自民党がNHKやテレビ朝日から事情を聴くなど、メディアをめぐる報道が昨今は続いている。今回は、そうした耳目を集めがちなテーマからやや距離を置きながら、放送業界の近未来図を収入面から描いてみる。

 そこから示唆される結論をあらかじめ簡潔に示すと、東京五輪が開催される2020年前後に、テレビがインターネットに抜かれ、最大の広告媒体の地位を失う可能性があること。もうひとつは、仮にNHKが民営化したら、受信料を上回る収入をあげられる可能性があることだ。いずれも簡便な手法ではあるが、エコノミスト的なデータ処理を通じてメディアの現状と課題に迫ってみたい。

 最初の問題意識および関心は、放送とインターネットの地位の逆転はいつ起きるのかという点だ。地位の逆転の判断には広告費を用いる。推計で使用するのは、広告代理店の電通が推計する日本の広告費である。経済変数を織り込んだ複雑な推計モデルを用いるのではなく、簡便にいくつかのシナリオを示していく(図1)。

推計1:インターネットの広告費はいつ、テレビを超えるのか

拡大

 もっとも簡単な逆転シナリオ(テレビにとっての悲観シナリオ)は、テレビ広告費(地上波・衛星・CATVなど)が一定にして、インターネット広告費だけが毎年、11%成長を続けると仮定すれば2020年には実現する。

 次は、テレビ広告費が毎年、1%減少するとの前提をおけば、インターネット広告費は毎年、10%の上昇で2020年に逆転となる。

 さらに、2010年から2014年までの前年比上昇率の平均値を逆転シナリオに使用すると、逆転時期は2020年より5年間、後ずれする。この期間は、リーマン・ショックからの回復局面である。また、ともにこの期間、最大値となった2014年の上昇率を投入すると、2022年には逆転が実現する。

 おそらく2020年には東京五輪があるため、五輪後に反動減が起きる可能性もある。その前の悪材料としては消費税増税の影響がある。ポジティブな要因としては、消費財・サービスの五輪商戦もあるだろう。このほか、広告費は、内外の景気動向、自動車、化粧品、大手金融などグローバル志向の消費財企業が経営戦略として、内外の広告費配分をどうするのかなど、実際に広告費に影響を与える変数は複雑だ。

 上記で得られた結果からは、今後、5年から10年間で両者の逆転の可能性があるということは言えるだろう。データを使用した期間は、衛星放送やCATVなどが増加しており、地上波テレビに限定すれば、上記で示したシナリオの推計年より早まる。

推計2:NHKが民営化すると、広告費は受信料を上回るのか

 では、もう一つの命題、NHK民営化、広告収入の可能性を解説していくこととする。まずは受信料の歴史を簡単に紹介する。NHKは1925年、社団法人日本放送協会として設立され、ラジオ放送を始め、日本のテレビ放送(技術も含めて)リードしてきた。

 戦後、1950年にスタートした受信料制度の前身は、ラジオ聴取料として徴取されていた。当時は、ラジオ受信機を設置するにも国からの認可が必要だった(村上聖一[2014]『放送法・受信料関連規定の設立過程』)ため、 ・・・ログインして読む
(残り:約2642文字/本文:約3985文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

小原篤次の記事

もっと見る