先進国で稀な経済縮小に無為無策な政府
2015年04月28日
経済協力開発機構OECD対日審査報告書の発表報道で国内メディアが見せた異様な危機感の無さに驚き呆れた。労働人口が急速に減っていく恐ろしさを前提に女性労働力活用を提唱しているのに、状況の困難さに全く気付いていない。
「そんな良いアイデアもあるんだね」といった軽い気分で伝えているが、実現できなければ経済のマイナス成長は確実だ。日本記者クラブで会見、公表した報告を「ロイター東京発」の外電記事で間に合わせる朝日新聞などは残念ながら論外だが、4月15日付NHKの《OECD 「抜本的な構造改革 至急強化を」》からも危機感は読み取れない。
《日本経済に関する報告書を発表し、ことしの経済成長率の見通しを1%に上方修正したうえで、成長戦略の実施が遅れを取っているとして、女性の労働参加などについて抜本的な構造改革を至急強化する必要があると提言しました》では、経済成長が続く前提で論じているとしか読めないのである。
OECDが主な提言の先頭に「労働力の減少傾向を遅らせる」を置いた意図は、右のグラフから明らかである。このままでは推定労働人口が2011年の6千万人から2030年には5千万人ほどに減ってしまう。これでは多少の技術革新があっても大幅な経済縮小は免れないのだ。
対日審査の報告書はこう述べる。
《労働力人口の減少を緩和するため、男女平等の推進が必要である。男性の労働参加率は85%と女性よりも20%ポイント高い水準にある。もし女性の労働参加率が2030年まで男性の労働参加率と同レベルに追いつけば、労働供給の減少は5%に留められ、労働参加率に変化がなかった場合に比べ GDPは約20%高まるだろう》。
つまり現在の歩みであるグラフの赤い線から青い線に移行せよとするが、なにせ相手になる政府は、女性は家庭で子どもを育てるのが美風と考える保守的な与党幹部がいる安倍政権だ。
実際にこの大変革は容易ではない。《雇用における男女間格差は、出産後労働市場に残る女性が38%に過ぎないという事実に表れている。日本は子育てや学童保育に対する支出(対GDP比)がスウェーデンや英国の3分の1に過ぎない。ただし、
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