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ギリシャのデフォルトシナリオ、楽観できず(下)

ユーロ離脱なら深刻で連鎖的な影響の拡大、長期化避けられず

根本直子 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

海外民間部門のギリシャ向けエクスポージャーは減少

 2012年当時との大きな違いとして、外国銀行の与信など、ギリシャに対する海外の民間部門のエクスポージャーが大幅に減少していることが挙げられる。現在、ギリシャのソブリン債務の債権者のうち約8割を公的部門が占めており、民間部門は約2割となっている。

拡大総選挙で勝利を収め、支持者の前に姿を現したチプラス氏=2015年1月25日、アテネ、梅原季哉撮影

 BIS統計によれば2014年9月時点で、BIS加盟国の銀行のギリシャへの与信(最終リスクベース)は計460億ドルであり、2011年3月の計1,380億ドルから大幅に減少した。国別にみてシェアが大きいのは、ドイツ、英国、米国であり、3カ国で全体の約80%を占めている。日本は3億ドルと非常に少ない。

 2012年にはスペインやポルトガルなど、EU域内のいわゆる周辺国の国債利回りが上昇したが、今回はギリシャと他国の国債の利回りの相関は小さくなっている。

 2012年10月に欧州安定化基金(ESM)が設立され、有事の場合の流動性支援や銀行への資本注入が可能になったことに加え、アイルランドやポルトガルなどでEUの支援のもと経済調整が成功したことも、市場の安心感につながっている。

 そのほかにも、ECBが2012年9月に新国債買い入れプログラム(OMT)を導入し、2015年3月には量的緩和政策をスタートさせるなど、リスクの伝播を抑制するためのさまざまな政策手段が講じられている。

欧州公的部門のエクスポージャーは増加も、潜在的な最大損失は吸収可能な範囲

 ギリシャに対する民間部門のエクスポージャーが減少する一方で、IMF、ユーロ圏政府、ECBなど、公的部門のエクスポージャーは増加している。直接の貸し出し、欧州金融安定化機構を通じた貸し出し、ユーロシステム(ユーロ圏の通貨政策を担う中央銀行制度)や欧州投資銀行を通じたエクスポージャーなどを合計すると、EU加盟国の最大損失額は3,000億ユーロ以上となる。

 これはユーロ圏の2014年のGDPの3%に相当する。ただし、この最大損失額はギリシャが一切返済しないと仮定したものであり、欧州投資銀行やユーロシステムの収益や資本でカバーされることは勘案されていない。各国政府の負担は、長期的に分散して発生するため、吸収可能ではあるが、 ・・・ログインして読む
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筆者

根本直子

根本直子(ねもと・なおこ) 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

日本銀行、S&Pグローバル、マネージング・ディレクターを経て現職。主なリサーチ分野は、金融機関経営、日本およびアジアの金融市場、包摂的成長。 早稲田大学法学部、シカゴ大学経営大学院、一橋大学商学研究科、商学(博士) 主な著書に「韓国モデルー金融再生の鍵」「残る銀行沈む銀行―金融危機後の構図」 財務省 関税・外国為替等審議会委員、中部電力、コンコルディア・フィナンシャルグループ社外取締役、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 経営管理委員。

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