ユーロ離脱なら深刻で連鎖的な影響の拡大、長期化避けられず
2015年05月02日
2012年当時との大きな違いとして、外国銀行の与信など、ギリシャに対する海外の民間部門のエクスポージャーが大幅に減少していることが挙げられる。現在、ギリシャのソブリン債務の債権者のうち約8割を公的部門が占めており、民間部門は約2割となっている。
BIS統計によれば2014年9月時点で、BIS加盟国の銀行のギリシャへの与信(最終リスクベース)は計460億ドルであり、2011年3月の計1,380億ドルから大幅に減少した。国別にみてシェアが大きいのは、ドイツ、英国、米国であり、3カ国で全体の約80%を占めている。日本は3億ドルと非常に少ない。
2012年にはスペインやポルトガルなど、EU域内のいわゆる周辺国の国債利回りが上昇したが、今回はギリシャと他国の国債の利回りの相関は小さくなっている。
2012年10月に欧州安定化基金(ESM)が設立され、有事の場合の流動性支援や銀行への資本注入が可能になったことに加え、アイルランドやポルトガルなどでEUの支援のもと経済調整が成功したことも、市場の安心感につながっている。
そのほかにも、ECBが2012年9月に新国債買い入れプログラム(OMT)を導入し、2015年3月には量的緩和政策をスタートさせるなど、リスクの伝播を抑制するためのさまざまな政策手段が講じられている。
ギリシャに対する民間部門のエクスポージャーが減少する一方で、IMF、ユーロ圏政府、ECBなど、公的部門のエクスポージャーは増加している。直接の貸し出し、欧州金融安定化機構を通じた貸し出し、ユーロシステム(ユーロ圏の通貨政策を担う中央銀行制度)や欧州投資銀行を通じたエクスポージャーなどを合計すると、EU加盟国の最大損失額は3,000億ユーロ以上となる。
これはユーロ圏の2014年のGDPの3%に相当する。ただし、この最大損失額はギリシャが一切返済しないと仮定したものであり、欧州投資銀行やユーロシステムの収益や資本でカバーされることは勘案されていない。各国政府の負担は、長期的に分散して発生するため、吸収可能ではあるが、
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