弱者への配慮を怠ってきた社会が変わるには
2015年05月08日
日本には、実に奇妙な「1%の壁」がたくさん存在している。
例えば「女性取締役」だ。国内上場企業3608社の取締役41973人のうち女性は515人で、比率は1.2%と、かろうじて1%を超えている(内閣府調べ)。
だが実態は「社外取締役」の女性比率が特に高いため、生え抜きの女性取締役の割合は1%に達していないようだ。世の中の取締役のうち、女性が100人中1人にも満たない――これは異常な状況ではないだろうか。
カルロス・ゴーン氏は2000年、日産の取締役に就任し、取締役会が全員日本人男性だったことに驚き、社内のダイバーシティ改革に乗り出したという。
「ダイバーシティ」というと「男女」のことと思われがちだが、そうではない。国籍、人種、育った場所、言語、障がいの有無、イデオロギーなど、ありとあらゆる多様性を含んでいる。
「男女」といっても最近はLGBT(レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)への認識が高まり、「性差は男女だけではない」との考えが広まりつつある。
日産自動車の取締役会メンバーを見ると、カルロス・ゴーン取締役会長兼社長以下、9人のうち外国人が4人。国籍や言語面でのダイバーシティは確保されているものの、取締役9人は全員男性で、男女のダイバーシティはない。
経産省と東京証券取引所が女性活躍推進企業を表彰する「なでしこ銘柄」を2012年に創設して以来、3年連続で「なでしこ銘柄」に選定されている日産自動車でさえ、このような状況だ。
日産自動車で女性の最高位は、星野朝子・専務執行役員。国内マーケティングや国内営業の担当だという。ちなみにトヨタ自動車の女性最高位は、ジュリー・ハンプ常務執行役員。ゼネラルモーターズの副社長、ペプシコの上級副社長を経て、トヨタに入社。現在はCCO(チーフ・コミュニケーションオフィサー=最高広報責任者)を努めている。
日本企業の取締役会は全員がダークスーツ姿の日本人男性なのが当たり前だが、カルロス・ゴーン氏のみならず、多くの外国人はその光景に驚く。
海外の機関投資家から「なぜ貴社の取締役は日本人の男性ばかりなのか」という質問が届いたという例も少なからず聞く。
日本人が当たり前だと思っている、男性ばかりの取締役会は、実はかなりガラパゴスな(海外とはかけ離れて独自の発展を遂げた)状況なのだ。
障がい者雇用も「1%の壁」があり、海外に比べて日本社会が遅れをとっている分野の一つだ。
障がい者雇用が国内生産労働人口(7900万人、2013年)に占める割合は、
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