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シャープ、崖っぷちの緊急事態

「目の付けどころがシャープでしょ」は蘇るのか

大河原克行 フリーランスジャーナリスト(IT産業)

 「外部環境の変化に弱い。それが業績悪化の理由。今後3年で揺るぎない事業基盤を作り上げる」――。

シャープの高橋興三社長

 シャープが5月14日に発表した中期経営計画は、国内3500人の人員削減、役員および従業員の給与削減と賞与カット、金融機関を対象にした総額2250億円の優先株発行、5億円への減資など、まさに大鉈(なた)を振るうものとなった。

「外部環境の変化に弱かった」

 なぜ、シャープはここまで業績を悪化させたのか。そして、その打開策はなにか。ヒト、モノ、カネの3つの観点から追ってみる。

 シャープが発表した2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績は、売上高は前年比4.8%減の2兆7862億円、営業損失は前年の1085億円の黒字から480億円の赤字に転落。経常損益は前年の532億円の黒字から965億円の赤字。そして、当期純損失は前年の115億円の黒字から、マイナス2223億円という大幅な最終赤字に陥った。

 シャープの高橋興三社長は、「2013年度は黒字化し、2014年度上期までは黒字基調で来た。だが、2014年度後半からは、市場環境が厳しさを増し、その環境変化に耐えられない体質であることが発覚した。ガバナンス、経営管理が外部環境の変化に弱かった」と、自己反省する。

 上期までは黒字を出せる体質であったものが、なぜ、2014年度下期には一転して赤字となったのか。

 シャープでは、次のように説明する。

 「価格下落を上回るコストダウンを行ったものの、液晶エンジニアリング事業による一過性収益が減少したこと、売り上げが減少したこと、さらにはモデルミックスの悪化などの影響で、利益が前年の約4割まで減少。さらに、太陽電池に使用するポリシリコンの長期契約に伴う単価差引当に加えて、液晶の在庫評価減により、マイナス480億円の営業赤字になった」(高橋社長)

液晶テレビ、パネル事業での経営ミス

 円安による調達コストの増加などが指摘されるなかで、コストダウン効果に対する企業努力は、大きな評価を与えられるだろう。だが、その一方で、液晶エンジニアリング事業による一過性収益が減少すること、ポリシリコンの長期契約によって、市場価格を上回る形で調達しているコスト増は、従前から想定できるものであり、この部分での対応の遅れは、経営のミスといわざるを得ない。

 そして、柔軟性のなさという点では、液晶事業などの売り上げ減少、モデルミックス悪化への対応の遅れ、その結果として、液晶の在庫評価減という事態に陥ったことが見逃せない。期初の営業利益予想に比べると、液晶テレビを主力とするデジタル情報家電で200億円以上、そして、液晶事業でも200億円以上の差が出ており、「これが急激な業績悪化の主因となっている」(高橋社長)。

 液晶においては、収益の柱としていたスマホやタブレット向けの中小型液晶における競争激化により、大口納入先を失ったことが影響している。これは想定外の環境変化だろうが、ここに対応できなかった点が大幅な最終赤字につながったのは紛れもない事実だ。

生かされなかった経験

 亀山第2工場では、収益性が悪い大型パネルの生産比率を減少させ、収益性が高い中小型パネルの生産比率を拡大する方針を掲げ、2014年度中には50%以上の構成比を目指していた。実際、2014年秋時点では一時的に構成比が50%まで高まっていた。だが、ここから一転して厳しい状況に陥った。先に触れた大口納入先を失ったことで、中小型液晶パネルを約2割を減産。その結果、構成比は約4割にまで下がった。アクセルを踏みつつあった矢先での急ブレーキに、対応が追いつかなかったというのが実態だ。

 これに加えて、第4四半期には、液晶パネルを生産する亀山工場、三重工場での減損処理を実施。あわせて堺の太陽電池工場、福山および三原の電子デバイス工場の減損を実施。合計で995億円の減損が発生した。

 さらに、液晶テレビについても、

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