論文生産と博士課程進学者の急降下、もはや手遅れか
2015年05月25日
科学技術立国は資源小国日本の国是だったはずだ。その未来が放棄されつつあると論文生産と博士課程進学者の指標が示すのに、政府・文部科学省は「世界トップ100に10大学」という皮相な数値目標しか眼中にない。
全分野論文数はまだ世界で5位を保つが、人口当たり論文数を指標にすると東欧の小国にも抜かれて世界で37位に転落している。国立大学法人化で始まった論文総数の減少傾向が根深い意味を持つと知れる。国際的に例が無い、先進国での論文長期減少の異常を最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が新たに作成したグラフを《いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!!》から引用する。
グラフは「人口当たり全分野論文数の推移(3年移動平均値)。日本は多くの東欧諸国に追いぬかれた。」である。年単位の凸凹をならすために前後3年間の平均を採用している。右端に並ぶ国名が2014年での世界の人口当たり論文数ランクになる。この数年でクロアチア、セルビア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、スロバキアといった東欧の小国に追い越されたばかりでなく、欧米先進国との差が開くばかりである。
世界的な論文数増加の勢いに取り残される傾向が、バブル崩壊があった1990年代から始まっている経過も見える。北欧の小国はもともと上位を占めている上に、2000年前後の世界的伸長ペースに取り残されて西欧の小国にも置いて行かれた。さらに東欧諸国にも今という次第である。
2014年の論文総数は人口が半分しかないフランスに猛追されており、このペースが変わらないとすると3年後にフランスに追い抜かれて6位になってしまいそうだ。人口当り論文数は「国ではありませんが香港を加えますと、国際順位としては37位」、「このままの政策が継続されれば、さらに国際競争力が低下する」と豊田氏は主張している。
昨年6月の第435回「2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる」と続編で政府・文部科学省が採っている大学「改革」政策の無謀さを指摘した。論文総数の異常減少グラフはそちらで見て欲しい。
豊田氏の分析が、論文数は大学への公的研究開発資金に左右されることを示しており、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください