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米中の軍産複合体の思惑に踊らされるな

南シナ海で衝突できない両国がなぜ危機感を煽るのか

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 米国連邦政府の中央情報局も、2014年のGDP(購買力平価での評価)の規模では、中国が米国を凌駕したことを認めた。更に、欧州連合が中国と米国の中間に来るので、米国経済は、今や世界ではナンバー・スリーの存在である。

 2014年にも、GDPの実質的な規模では、中国が米国を上回ることは、国際通貨基金などが昨秋公表した資料で予測していたことである。しかし、同予測では、欧州連合が中国に抜かれる時期は今年の2015年としていたが、ユーロ安で若干早まった(注1)。

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 それぞれの国の国民の生活水準に直結する指標として重要なのは、国民1人当たりのGDPの水準と、所得がいかに分配されているか、である。

 しかし、GDPの規模の大小は、国家予算の規模、軍事支出の規模を決める最大の制約条件になる。世界政治の中での、各国の「影響力」の大小を決める最大の要因の一つといえる。

 米国経済のGDPの規模は、日本が明治維新直後だった1870年代から一貫して世界のナンバー・ワンであったと、さまざまな推計で指摘されている。米国が中国、欧州連合の後塵を拝するのは、過去140年間余の歴史の中では、初めて経験する新事態。首都ワシントンに参集する米国の政治・経済・軍事・外交などのエリート層にとっては、我慢がならないのかもしれない。

 日本も、購買力平価で評価したGDPの規模では、アジア危機後の1999年前後には中国に抜かれ、実際の為替レートで評価した(経常価格で評価した)GDPの規模では、2009年に中国に抜かれたと推計する研究機関が少なくない。

 しかし、産業革命がイギリスから世界に拡散し始めた19世紀初頭以降の200年余の歴史をふり返れば、その当時の世界経済バランスに戻りつつあるだけともいえる。

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 しかし、日中のGDPの名目規模が逆転した2009年の翌年の2010年から、日中関係が、尖閣諸島の帰属をめぐって、全般的に大きくギクシャクし始めたのは、偶然ではない。

 米国の従来の方針は、成長する中国経済を、第2次世界大戦後に米国自身が主導して作り上げた世界経済の貿易、金融など、世界システムの枠組みにスムーズに取り込もうというものであった。

 しかし、そこに出現したのが、世界システムの胴元を自認して来た米国の経済規模を、取り込もうとする相手の中国のそれが上回る事態だ。ワシントンのエリート層の多くが内心焦りを感じているとしても不思議ではない。そんな事情を反映してか、

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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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