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上海株式市場の危うさ

「デフレ」も「中進国の罠」も飲み込む

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 上海株式市場の指数である上海総合指数(注1)が、今年春から急騰し、8年ぶりに5000の大台に乗せている。この半年で約2倍という熱狂ぶりだ(グラフ)。ところが中国経済の現状を示す数字は低迷し、先行きの不透明感は増す一方。2015年の経済成長率も目標の7%には達しそうにない。このギャップは一体どこから来ているのだろうか。

 グラフに見るように、上海総合指数は2007年秋に6000のピークを付けた。直後に米国金融機関による「リーマンショック」が発生。同指数は翌年には一気に1800まで暴落し、熱狂していた投資家たちは大損を出し、「もうこりごり」と株取引から撤退した。

株のセミナー大盛況

 それから8年。当時の苦い記憶が薄れたのか、同じ現象が再現されている。今年春ごろから投資の初心者たちが証券会社に押し寄せて取引口座を開設し、中には仕事をやめたり、田畑を手放した資金を株に投入したりする農家まで出現。株のセミナーは大盛況で、「予想屋」たちは取引銘柄を指南するのに大忙しだ。

 上海総合指数が急騰しているのは、中国人民銀行(中央銀行)が昨年11月以来、不振の景気テコ入れのために、基準金利と民間銀行に対する預金準備率を断続的に引き下げる金融緩和を実施していることが背景にある。

 たとえば中国の5月の貿易統計は595億ドルの黒字だったが、内訳をみると、輸出が前年同月より2.5%減少し、輸入が17.6%減と予想外に激減していた。これは輸出競争力が劣化している一方、政府が力を入れている消費や内需拡大に力がないことを示している。

 5月は消費者物価指数(CPI)も前年比1.2%上昇と市場予想を下回り、経済が減速する中でデフレ圧力が高まっている。人民銀行や政府内部には相当の焦りや危機感が生じており、それがひんぱんな金融緩和につながっている。

「理財商品」が抱えるデフォルト不安

 それだけ中国経済の現状はデフレの恐れがあって厳しいわけだが、

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