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同性愛を生きる企業人の葛藤

BP元幹部が告白本で投じた一石

小林恭子 在英ジャーナリスト

 東京・渋谷区が4月、同性カップルを結婚に相当すると見なす条例を施行し、同性婚への関心が日本で一気に高まったようだ。

拡大『THE GLASS CLOSET』の連携ウェブサイト

 筆者が住む英国では2005年に同性カップルを夫婦と同等に見なす「シビル・パートナーシップ制度」が施行され、昨年には同性婚が合法化された。

 世界で初めて登録パートナーシップ制度が実行されたデンマーク(1989年)や、世界で初めて異性同士の結婚とまったく同じ婚姻制度ができたオランダ(2001年)と比較すると遅れた感があるものの、性的指向の違いによって肩身の狭い思いをしてきた同性愛者たちにとって、うれしい動きといえよう。

 しかし、結婚に至る前の段階で、同性愛者に対するさまざまな偏見が消えさったわけではない。

 英国で同性愛行為が違法でなくなったのは1967年(イングランド・ウェールズ地方。スコットランドは1981年、北アイルランドは1982年)で、同性愛者への差別は法律で禁止されている。しかし、実際には「カミング・アウト」という言葉の存在自体が示すように、勇気を持って打ち明けるほどの事柄として認識されている。

 昨年春、英国の元大手企業のトップが同性愛者に対する差別や偏見をなくするために書いた本『ガラスのクローゼット』(The Glass Closet)が、注目を浴びた。「クローゼット」は押入れを指すが、「押入れから出る」(come out of the closet)から「隠していた状態から外に出る」、ひいては「同性愛者であることを公表する」という意味になる。

拡大『THE GLASS CLOSET』

 本を書いたのは、国際石油資本「BP」で12年間にわたりCEOを務めた、ジョン・ブラウン氏(67歳)だ。同性愛者であることが知られていなかった2007年、元ボーイフレンドとの間柄を大衆紙にスッパ抜かれそうになり、急きょ辞任を決意した。CEO在任時にはBPのビジネスを大きく拡大化、多様化させ、一つの「黄金時代」を築いたという。ブラウン氏の経営スタイルには、ルイ14世をほうふつとさせる「太陽王」というあだ名がつくほどであった。しかし、そのキャリアは太陽から地の底へと、一瞬にして瓦解することになった。

 ブラウン氏の『ガラスのクローゼット』の内容を紹介しながら、同性愛者と仕事との関係を考えてみたい。

大衆紙報道に差し止め願い

 ドイツ・ハンブルクで生まれ、英国で育ったブラウン氏は、10代の頃から他の男の子に性的な興味を抱いてきた。しかし、当時、男性同士の愛の行為は違法であることに加え、 ・・・ログインして読む
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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

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