林美子(はやし・よしこ) 朝日新聞編集委員
1962年生まれ。85年入社。新潟支局、水戸支局、経済部、社会部、くらし編集部、北海道報道センターなどを経て2014年4月から現職。労働問題を中心に取材。2015年5月から6月にかけて、「プロメテウスの罠」に「たらちねの母」を執筆。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
「幻」を見るのではなく、目の前の当事者の声を聞くべきだ
「政府が派遣労働者に『スキルをつけてあげますよ』というのは、女性蔑視ではないのか。派遣で働くのは女性が多いが、『女性は仕事がないからスキルをつけてあげましょう』と。でも私はもう何年も、必要なスキルを身につけて働いてきているんです」
労働者派遣法改正案が衆院を通過した6月19日、派遣労働者9人(うち女性8人)が厚生労働省で抗議の記者会見を開いた。その一人、40代の女性が強調した言葉だ。
改正案では、一人の派遣労働者が同じ職場で働ける期間に3年の上限を設ける。一方で、派遣労働者に対して教育訓練やキャリアコンサルティングを行うようよう、派遣会社に義務を課している。厚生労働省の担当者は「これまでは義務ではなかったキャリアアップの措置を、改正案で初めて義務づけた」と胸をはる。
また、3年で職場を去ったその後について、改正案では派遣会社に「雇用安定措置」を義務づけている。内容は①派遣先への直接雇用の依頼②新たな派遣先の提供③派遣元での無期雇用④その他必要な措置、の4項目だ。安倍首相は19日の衆院厚生労働委員会の質疑で、「正社員を希望する人には道を開く法案だ」と強調した。
だが、派遣で働く当事者たちは、これらの言葉を欺瞞だと感じている。19日の会見から発言を拾ってみる。
まず、キャリアアップ措置について。
「すでに専門スキルを持っている人が雇用されているんです。スキルアップというのはまやかしです」
「派遣の職歴をいくら重ねてもキャリアアップにならない。正社員の就職活動につながらない。職歴に派遣と
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