メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

こんなレベルの低いTPPでよいのか?

対処方針が十分に議論されず、明示もされないまま続く交渉

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 TPPなどの貿易交渉権限をアメリカ連邦政府に与えるTPA法案の議会通過が、難航している。通商交渉の案件がこれほどアメリカで報道され、関心を集めることは、私の記憶では初めてである。

拡大TPP反対派議員らによる集会。TPA法案の審議が進むたびに頻繁に開かれた=2015年6月3日、ワシントン

 次期大統領選の有力候補であるヒラリー氏も、民主党の支持基盤である労働組合に配慮して、国務長官として熱心にTPP交渉を推進してきたことを忘れたかのような、態度をとっている。

秘密交渉という批判が見逃したもの

 TPA法案への反対の大きな理由は職が失われるというものだが、日本だけでなく、アメリカでも、TPP交渉は秘密交渉であると批判されている。ただし、政府間の交渉だけでなく、民間の交渉も含め、どの交渉にも秘密はつきものだ。どの国がどのような主張をしているのかが秘密にされるのは当然だ。

 TPP反対派の国会議員は、アメリカの議員やそのスタッフは限定的だが交渉されている協定案文へのアクセスが認められているのに、日本の国会議員には一切認められていないのは不公平だと主張している。

 しかし、守秘義務がかかるので、協定案文を見ても、交渉内容を公に批判できないというのでは、最終結果を見ることに比べて、大きな差があるというものではない。批判のために検討できる時間が増えると言うだけのことだ。

 これまでの日豪などの二国間の自由貿易協定の交渉では、協定案文を見せろと言ったことはないのに、TPP交渉だけは見せろと言うのも奇妙な話である。

 もっとも、交渉内容について明らかにできないにしても、どのような方針で日本政府が交渉に臨んでいるのかについては、国会で十分に議論し、それを交渉に反映できるはずだ。日本の場合、

・・・ログインして読む
(残り:約1460文字/本文:約2155文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

山下一仁の記事

もっと見る