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「不戦の誓い」が揺らぐ怖さ

若者たちが熟慮の上にその賢明さを発揮して戦争なき平和な未来を

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 「日本がアジアでやった戦争については、よく知らない」と語る学生に会うたびに、私は「それは君のせいじゃない」と言うことにしている。「近現代史をしっかりと教えるのは公教育の責務であり、それが十分に機能するためにはメディア・ジャーナリズムの役割こそが重要だ。問題は残念ながら、それらが不十分であったことだね」と。

原爆ドーム

 現代日本の学生たちの多くは、第二次大戦について貧弱な知識しか持ち合わせていない。まして、日本がアジアの人々に対して侵略と植民地支配でどれほどの被害や苦しみを味わわせたのかについては、ほとんど知らない。

 それにとどまらず戦後50年の村山首相談話、同60年の小泉首相談話で「侵略と植民地支配」への「痛切な反省」と「心からのお詫び」が述べられたことも、あまり知らない。しかし、このことで若者たちを責める資格が古い世代の人々にあるとは思えない。胸に手を当てるべきは政治家、教師、ジャーナリストをはじめとする大人たちである。

 そんなことを考えていたおり、久々に広島を訪れる機会があった。午前8時15分、原爆ドームの前で鐘の音を聞きながら黙とう。死没者慰霊碑の前で再び祈ったあと、石碑に刻まれた文字をしばし見つめた。「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」というあの有名な言葉である。

 この「過ち」をおかした主体があいまいだとか、そもそも

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