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「マイナンバー」は基礎年金番号より漏れやすい

松浦新 朝日新聞経済部記者

マイナンバーのマスコット「マイナちゃん」と、甘利明・経済再生相=2015年5月26日、内閣府

 日本年金機構が管理する年金の個人情報が、延べ125万件漏れた。漏れたのは、①基礎年金番号②氏名③生年月日④住所の4情報という。4情報がわかると年金事務所や銀行などで本人になりすます犯罪に使われる可能性がある。

 いまのところなりすましの被害は報告されていないが、不安に感じている気持ちにつけ込む詐欺が横行しているようだ。今回の事件で、来年1月から使われるマイナンバーに改めて疑問を持った。

 基礎年金番号は、厚生年金、国民年金など、国の年金制度に加入している人全てについている。1986年に基礎年金制度ができて以来、国民が20歳になったら振り出されている。生涯に一番号と決まっており、転職しても同じ番号を使うため、転職を繰り返したり住所を変わったりしても、年金が受給できる年齢になった時には年金の加入歴がわかり、年金がきちんと支払われることになっている。同姓同名などによる混乱を防ぐために意味がある番号といえる。

 基礎年金番号が使われるのは年金の業務だけだが、マイナンバーは行政のさまざまな場面で使われる。行政が把握している所得などの情報にマイナンバーがついて検索が簡単にできるようになるため、例えば児童扶養手当や雇用保険を受け取る時に市町村やハローワークに出す書類が大きく減るなど、国民は面倒な手続きを減らすことができる。行政の仕事の効率もあがるだろう。

 その範囲は、行政機関に限らない。マイナンバーは税金の処理で使われるが、日本は会社など勤務先が税の源泉徴収で大きな役割を果たしている。従業員は自分のマイナンバーだけでなく、家族の番号も勤め先に知らせなければならない。

 勤め先の情報管理がしっかりしていれば問題ないが、記録の管理が専門の年金機構でも今回の事故を起こしているので、大企業だから安心という保証はない。余力のない中小企業は万全の体制をとることが難しい。マイナンバーが始まると、遠からず「漏れた」という情報が飛び交う

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