英国の先進的な「社会的インパクト投資」のモデルとは
2015年07月15日
儲かる仕事は放っておいても民間が勝手に進める。しかし、儲からない仕事は政府や自治体が資金を出さないとなかなか進まない。儲からない仕事にこぞってお金を出す聖人君子は、そう多くはいない。
だから、子育て・保育などの児童福祉、介護などの高齢者福祉、障害者福祉といった「社会的分野」に関する仕事は、民間から豊富な資金を調達しようとしても無理がある。社会的分野に補助金や保険といった公的支援策が施されているのは、まさにそういう理由による。
ところが近年、社会的分野に係る問題解決と収益確保の両立を図る新しい投資の在り方が、世界的に注目を集めている。これは、「社会的インパクト投資」と呼ばれている。
リターンとリスクというこれまでの投資指標に社会的な「インパクト」という指標を加えた投資のことだ。それほど大きなリターンを望まないが、住み心地良き社会環境という配当を得ようという「志」があれば、社会的インパクト投資がもっと行われていくだろう。
英国では、実は既にそういう取組みが始まって久しい。『ブリッジズ・ベンチャーズ』という社会的インパクト投資ファンドがある。2002年に半官半民ファンドとして発足した。同社はこれまでは、社会的インパクト投資としては、かなりの好業績を残してきている。
現在の投資残高は約5億英ポンド。2013年度の内部収益率は15%に上った。教育、健康、持続性の3分野において、十分なサービスが行き届かない貧困下位25%の地域に貢献する企業や非営利団体、社会的起業家を投融資の対象とする。投資戦略の中核として「バリュー・フォー・マネー」を掲げている。
ブリッジズ・ベンチャーズが2004年に投資を開始した『ザ・ホクストンホテル』は、高所得者層向けの充実したサービスを低価格で提供し、イングランド内で貧困下位3%に数えられる地域に位置している。208ある部屋の稼働率は常に90%以上。このホテルが支払う給料のうち73%が近隣の貧困地域に住む従業員向けで、同ホテルの仕入れ金額の85%は同地域の業者からのものであるなど、同地域の経済活性化に大きく貢献している。2012年に売却した際、内部収益率は47%、キャッシュ総額は約9倍にまでなっていた。
『ザ・ジム』というスポーツクラブは、2007年から2013年にかけてブリッジズ・ベンチャーズの支援を受けた。それにより、売却時の内部収益率は50%、
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