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賃金労働者への実質的な分配率が大幅低下

実質賃金水準と1人当たり実質GDPの推移から見えてくるもの

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 日本の実質賃金水準の推移をめぐって、あちこちで議論になっている。

 2015年4月の新年度入り以降は、インフレ率(前年同月比)をかさ上げしていた14年4月の3%の消費税率引き上げ分が1年経てなくなるためにインフレ率が低下するうえ、今春の賃上げによる名目賃金の水準の上昇ともあいまって、実質賃金の前年同月比変化率をプラスの領域に押し上げるだろうと、喧伝する向きが多かったからだ。

 そのような期待を裏付けるように、日本政府の厚生労働省が集計している「毎月勤労統計調査」(以下の全ての数字は、同調査結果内の5人以上の事業所に関するもの)では、6月2日に公表された今年4月分の速報値では、日本の実質賃金の水準は、前年同月比で、プラス0・1%と、2年ぶりのプラスになった。

 「賃上げ広がる」「個人消費に追い風」「経済好循環へ節目」などと、アベノミクスの成果だと大きく伝えられた。

 しかし、6月18日になって確報が出ると、プラス0・1%が、マイナス0・1%へと、プラスがマイナスへと修正された。

 6月30日になって公表された今年5月分の速報でも、前月分の確報と同様に、マイマス0・1%であった。

 実相はどうなっているのか。

 基準年の2010年を100・0とする今年4月の実質賃金指数(季節調整済)の水準は、速報段階から確報段階でいかに変化したかといえば、96・0であったものが、95・8に下方修正された程度である。基準年の2010年に比べて、元々4%も大きく低迷したままで、今後には反落のリスクもあるという状況は変わっていない。名目賃金指数は、確報では99・9と、基準年の水準を、わずかだが割り込んでいる。

 15年5月分(速報値)は、名目賃金指数が99・6、実質賃金指数が95・0であった。名目賃金の前年同月比変化率は、15年4月が0・7%、5月が0・6%であった。

 日本の名目・実質賃金指数の水準が最高であったのは、

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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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