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[11] 全英オープンを心底楽しむ(上)

聖地オールドコースで5年ぶりに開催

山口信吾 ゴルフ作家

 全英オープンゴルフ選手権(以下「全英オープン」と略)の季節が巡ってきた。今年の第144回大会は、7月16日(木)、聖地セントアンドルーズ・オールドコース(以下「オールドコース」と略)で開幕した。

 世界最古の歴史を誇る全英オープンは、数あるゴルフトーナメントの中で抜きん出た存在である。大自然を相手に究極の技と精神力が問われるからだ。何年にもわたってテレビ生中継で全英オープンを観戦しているうちに、なんとしても現地へ行きたいという思いが募り、ロイヤル・セントジョージズGCで開かれた2003年大会と、ミュアフィールドで開かれた2013年大会を生観戦した。さらには、9つの全英オープン開催コースのみならず、かつて開催地となった5コースにも出かけてプレーした。これまでの体験を踏まえて、ぼくが愛してやまない全英オープンの奥深い魅力についてお話ししたい。

リンクスでの開催が不文律

 全英オープンは、最難関のリンクスで開催されるのが不文律となっている。9つの名門リンクスで順不同に開催され、5年ごとに聖地オールドコースに戻ってくる。15~23万人もの観客が集まり、2万人余が座れる観客席が設営される。世界中で6億世帯がテレビ観戦する、1億ポンド(約190億円)もの経済効果をもたらす世界最大級のスポーツイベントである。

 リンクスの一番の特徴は伸ばし放題のラフである。コンサイス英和辞典によれば、ラフ(Rough)とは「フェアウェイの両側の刈り込んでない草地」である。本来、刈ってしまえばラフではない。リンクスでは、ラフの本来の意味が忠実に守られているのだ。

 全英オープンの開催に備えるグリーンキーパーが一番心配するのは、天候が悪くてラフの芝草の生育が悪いことである。芝草にも作柄があるのだ。全英オープンでラフが生い茂っていなければ、グリーンキーパーの恥とされる。フェアウェイではなく、ラフにスプリンクラーを設置したコースさえあると聞く。

 全英オープンが毎年7月中旬に開催されるのには訳がある。5月頃から日照時間が増えてラフの野生の芝草が勢いよく伸び始め、7月になれば膝丈より長くなり密生する。さらには、ただでさえ硬く締まっているフェアウェイが太陽に照らされて乾燥し、ボールを止めるのが大変難しくなる。全英オープンが初夏に開催されるのは、世界の名手でさえ手を焼く最高難度のリンクスを提供するためだ。

拡大生い茂るラフから脱出するミケルソンの渾身の一打

 厳しいラフで知られるミュアフィールドの全長は7192ヤード(パー71)であり、全英オープン開催コースの中で最も短い。しかし、ここで開かれた2013年大会において、アンダーパーで回ったのは、通算1アンダーで優勝したフィル・ミケルソンただ一人だった。膝丈まであるラフに囲まれた狭いフェアウェイに加えて、

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筆者

山口信吾

山口信吾(やまぐち・しんご) ゴルフ作家

1943年、台北市生まれ。九州大学工学部建築学科を卒業後、同大学院を修了。69年、竹中工務店に入社。72年に渡米し、ハーバード大学デザイン大学院修了後、米国大手設計事務所に勤務。75年に帰国して竹中工務店に復帰。一貫して都市開発プロジェクトに従事。2004年の定年退職後はゴルフ作家として活動している。43歳でゴルフを始めた遅咲きゴルファー。ベストハンディキャップ8。97年以来、毎年のように英国の海岸地帯の「リンクス」と呼ばれる自然のままのコースを巡る。『定年後はイギリスでリンクスゴルフを愉しもう』(亜紀書房)、『普通のサラリーマンが2年でシングルになる方法』(日経ビジネス人文庫)、『死ぬまでゴルフ!』(幻冬舎)など著書多数。自身のブログはhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~single 【2016年3月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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