聖地オールドコースで5年ぶりに開催
2015年07月17日
全英オープンゴルフ選手権(以下「全英オープン」と略)の季節が巡ってきた。今年の第144回大会は、7月16日(木)、聖地セントアンドルーズ・オールドコース(以下「オールドコース」と略)で開幕した。
世界最古の歴史を誇る全英オープンは、数あるゴルフトーナメントの中で抜きん出た存在である。大自然を相手に究極の技と精神力が問われるからだ。何年にもわたってテレビ生中継で全英オープンを観戦しているうちに、なんとしても現地へ行きたいという思いが募り、ロイヤル・セントジョージズGCで開かれた2003年大会と、ミュアフィールドで開かれた2013年大会を生観戦した。さらには、9つの全英オープン開催コースのみならず、かつて開催地となった5コースにも出かけてプレーした。これまでの体験を踏まえて、ぼくが愛してやまない全英オープンの奥深い魅力についてお話ししたい。
全英オープンは、最難関のリンクスで開催されるのが不文律となっている。9つの名門リンクスで順不同に開催され、5年ごとに聖地オールドコースに戻ってくる。15~23万人もの観客が集まり、2万人余が座れる観客席が設営される。世界中で6億世帯がテレビ観戦する、1億ポンド(約190億円)もの経済効果をもたらす世界最大級のスポーツイベントである。
リンクスの一番の特徴は伸ばし放題のラフである。コンサイス英和辞典によれば、ラフ(Rough)とは「フェアウェイの両側の刈り込んでない草地」である。本来、刈ってしまえばラフではない。リンクスでは、ラフの本来の意味が忠実に守られているのだ。
全英オープンの開催に備えるグリーンキーパーが一番心配するのは、天候が悪くてラフの芝草の生育が悪いことである。芝草にも作柄があるのだ。全英オープンでラフが生い茂っていなければ、グリーンキーパーの恥とされる。フェアウェイではなく、ラフにスプリンクラーを設置したコースさえあると聞く。
全英オープンが毎年7月中旬に開催されるのには訳がある。5月頃から日照時間が増えてラフの野生の芝草が勢いよく伸び始め、7月になれば膝丈より長くなり密生する。さらには、ただでさえ硬く締まっているフェアウェイが太陽に照らされて乾燥し、ボールを止めるのが大変難しくなる。全英オープンが初夏に開催されるのは、世界の名手でさえ手を焼く最高難度のリンクスを提供するためだ。
厳しいラフで知られるミュアフィールドの全長は7192ヤード(パー71)であり、全英オープン開催コースの中で最も短い。しかし、ここで開かれた2013年大会において、アンダーパーで回ったのは、通算1アンダーで優勝したフィル・ミケルソンただ一人だった。膝丈まであるラフに囲まれた狭いフェアウェイに加えて、
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