ユーロ圏の「終りの始まり」が始まった
2015年07月21日
7月5日のギリシャ国民投票での圧倒的な「ノー」にも拘わらず、その1週間後の13日の未明、チプラス政権はEUの求める財政緊縮策を全面的に受け入れて、ユーロ圏に留まるという選択をした。
しかも、500億ユーロ相当の国有財産を将来の返済原資としてEUと共同管理のうえ民営化を行う、という追加の条件まで飲まされた。この交渉はギリシャの全面的敗北である。
交渉妥結の後で、チプラスは「ギリシャ国民は緊縮策の条件の再交渉を我々に求めたが、ユーロ圏から離脱する裁量は国民から与えられていない」と述べている。
私は前稿「ユーロ圏離脱でギリシャは蘇り、EUは政治分裂?」(7月11日)で、ギリシャがユーロ圏から離脱した場合に、離脱の時点で大きな混乱があっても、いずれギリシャ経済が再生する可能性が高いことを説明した。言うまでもないが、これは私のアイデアではなく、多くの経済学者が指摘しているマクロ経済の常識である。
ただし、ユーロ圏離脱に際しては、ギリシャの中の公務員や年金生活者に大きなしわ寄せが生じる。これまでユーロで受け取っていた給与や年金が「弱い通貨」で支給されることになるからだ。おそらく、労働組合に組織化された公務員のような勢力が、チプラス政権を生んだ急進左派連合の支持基盤なのだろう。だから、「ユーロ圏離脱」がチプラスの交渉カードに無かったということかもしれない。交渉カードがなければ、相手の要求を呑むしかない。
はっきりしているのは、ここで合意された救済策はいずれ破綻する、ということだ。
EUは、今後もギリシャが名目GDPの3%相当のプライマリー・サープラス(国債費を除いた財政黒字)を計上するために、更なる付加価値税の増税や年金の削減を含む財政緊縮策を求めている。ギリシャの名目GDPが更に落ち込むことは確実である。EUからの融資で取りあえずの返済原資を確保しても、いずれ返済が不可能になる。EUにとってもギリシャにとっても、問題を先送りしているだけである。
本稿では、この1~2週間の間に起きた様々な当事者の政治的な動きについて
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