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同性愛者として生きるということ(上)

スポーツ界、教育、教会との関係から

小林恭子 在英ジャーナリスト

 前回、元BPの経営トップ、ジョン・ブラウン氏が書いた『ガラスのクローゼット』(2014年)を紹介した(「同性愛を生きる企業人の葛藤」、2015年6月22日)。8年前、同性愛者であることが大々的に報道されることになり、BP社を退社した経緯と、性的指向を隠さない運動を率先する現在を書いた本だ。

 今回は、さまざまな職場や家庭における、同性愛者とカミングアウトの周辺状況に注目したい。

スポーツ界の実態は

 先の『ガラスのクローゼット』は、同性愛者であることを特に表に出しにくい業界の1つとして、スポーツ界を挙げている。

 

 英国では2010年の平等法の下、企業や公的サービスが性的指向によって人を差別することを禁じている。しかし、守ってくれるはずの法律があっても「隠れた」(「クローゼットに入っている」)状態を選択する人がプロ・スポーツ界では非常に多い。

 これは、同性愛や同性愛者に対する恐怖感や嫌悪感、つまり「ホモフォビア」に基づいた、ファンからの抵抗・批判・冷やかしや、スポンサーが支援を取りやめるなどの事態を恐れるからだ。同僚や組織の経営陣からの抵抗や冷遇される可能性もある。

 英国のプロ・サッカー選手で同性愛者であることを1990年に公表したのが、ジャスティン・ファシャヌーだった。いくつかのチームでプレイしたが、公表後は同性愛者であることでファンからの暴言の的になった。

 1998年、米メリーランド州滞在中に10代の少年がファシャヌーから性的攻撃を受けたと警察に通報。英国に逃れたファシャヌーはロンドンで首吊り自殺した。遺書には、少年とは合意を得ての性行為であったこと、自分が同性愛者であるために米国では公正な裁判が行われないだろうと書かれていた。

 ドイツの元サッカー選手トーマス・ヒッツルスペルガーは、2013年、31歳で現役を引退し、同性愛者であることを2014年1月に公表した。英プレミア・リーグで戦った経験を持つ選手の中では最初に告白した人物となった。「なんら恥じることではない」という姿勢を通しているが、 ・・・ログインして読む
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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

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