安保法制強行採決・新国立競技場問題から見えたもの
2015年07月27日
安保法制の衆院での強行採決、労働者派遣法の衆院通過と、国民の反対の声を強引に押し切る政治が続いている。
総工費2520億円に膨らんだ新国立競技場の建設問題でも、旧国立競技場を生かして都心の景観も守るリーズナブルな予算を、と求めてきた市民運動を押し切ったツケが、ここにきて出た。「民意を聞かない政治」といってしまえばそれまでだが、一連の出来事から見えてくるのは、6月末に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2015」の実像だ。
「骨太の方針」は、現状を「バブル崩壊後4半世紀ぶりの良好な状態」と呼ぶ。実は2014年度は実質マイナス成長だったのだが、これは消費増税導入による一時的な現象と片付け、影響が「吸収」される今後は堅調な成長が予想されるとして問題は先送られる。懸案の財政状況についても、やはり「良好な経済」のおかげで改善とし、国民生活の支援にかかわる諸出費の削減、という今後の処方箋が示される。
そんな代表例は、東日本大震災の復興についてのものだ。ここでは「原子力災害地域でも復旧が進み、帰還に向けた動き」が見え、「新たなステージへの移行」が始まっていると胸を張り、復興事業への被災自治体に一定の負担を求めること、「風評被害」対策を着実に実施するなど、住民負担の強化と情報統制が提言されているだけだ。
今年の4月17日には福島県南相馬市の住民らが、東京電力福島第一原発事故で局地的に放射線量が高くなった「特定避難勧奨地点」の解除は時期尚早とし、その取り消しと慰謝料を求めて東京地裁に提訴している。このように、公的な支援が必要な層はなくなっていない。
にもかかわらず「骨太」は、「公共サービス分野を『成長の新たなエンジン』に育て、「公共サービスの無駄」をなくし、質を改善するために「国民・企業・地方自治体が意欲を持って参加」し、国、地方が保有する「不要な資産の売却を進め、債務の償還又は震災復興などに追加的に発生する歳出増加要因に活用する」ことを提唱する。
つまり、公共サービスのもうかるところは企業が「成長」のためビジネス化し、
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