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TPPに前のめりになる必要なし

現状以上の「自由化」はそれほど大きな効果はない

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 ハワイのマウイ島で行われていたTPP交渉は7月31日(日本時間8月1日)、合意に達せず閉会した。日米などが中心になって八月下旬に改めて閣僚会議を開く予定だが、それまでに問題が決着に向かうかどうかは不透明だという。

甘利明TPP相は7月28日午後、フロマン米通商代表部(USTR)代表と会談した(代表撮影)=マウイ島〈米ハワイ州〉のホテルで

 しかし、一体TPP交渉が決着することが日本にとってどれだけのプラスとマイナスをもたらすかの分析はほとんど目にしない。かつてのGATT=WTOを中心とする貿易自由化交渉はたしかに世界の貿易量を増大させ、先進各国の経済の活性化に寄与した。そして、先進各国の関税率は大きく下がってきている。

 その結果、2010年その時点では、日本が4.9%、アメリカ3.5%、EU5.3%、カナダ4.5%、オーストラリア3.5%と先進国の平均関税率は5%を切るに至っている。農産物に限ってみると日本は21.0%と他の先進国よりかなり高くなっているが(EU13.5%、アメリカ4.7%、オーストラリア1.3%)、これはコメ等の高関税品目が平均値をつり上げているためで、その他の品目をみれば、すでに相当自由化されている。

 日本の農産物中間税ゼロのものが35%もあり、

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