やはり消せない大戦の過去
2015年08月10日
フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏の近著「『ドイツ帝国』が世界を滅ぼす」が話題になっている。その中でトッド氏は、ドイツが経済で成功したからくりをこう説明する。
「ドイツは欧州中央銀行(ECB)の本部をフランクフルトに誘致して金融を握った。ユーロ安で輸出を伸ばし、低賃金の東欧圏を生産基地にし、軍事費はNATOにお任せ。つまりEUの恩恵を独り占めしてきた」(右下のグラフ参照)。
仮にドイツがいま旧通貨であるマルクのままでいたら、その強い経済力ゆえにマルク高になり、輸出は今よりかなり低調なはずだ。しかし実際には、ユーロに加盟するポルトガル、ギリシャ、東欧諸国など弱体国のおかげでユーロは安く、ドイツ経済に味方した。
2008年の金融危機後もドイツの銀行経営は健全で、国境を接するオランダ、ベルギー、スイス、オーストリアや東欧諸国を経済圏に取り込み、最近はウクライナにも接近する。これが「ドイツ帝国」のビジネスモデルで、トッド氏に言わせれば、フランスすらドイツに服従しており、「オランド大統領はドイツ副首相」なのだという。
ギリシャのEU残留は7月12日、ブリュッセルでの最終交渉で決まった。その後の報道によって会議の様子が
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