想像力の劣化、感性の劣化という恐ろしい現象に抗し切るために
2015年08月11日
「ビラは何枚くらい作ろうか」
「ビラ? ああ、フライヤーですか」
「枚数はあの連絡網で相談しよう」
「わかりました、LINEグループのことですよね」
「ところで、どうして君たちはシュプレヒコールで“郵政守れ"“郵政なめんな"って言うんだ?」
「あのー先生、“I say 憲法、You say 守れ"“I say 国民、You say なめんな"のあと、“憲法‐守れ!"“国民‐なめんな!"ってかけ合いするコールのことっスか?」
まるで新作落語の「孫と祖父の会話」のようなやり取りだが、いずれも実際に耳にしたものばかりだ。
全国の大学でこの夏、安全保障関連法案に反対する動きが起きている。学生を中心としたグループのSEALDsの動きが目立っているが、各大学独自の動きも盛んだ。
「安全保障関連法案に反対する学者の会」(http://anti-security-related-bill.jp/)のホームページで紹介されている「全国各大学の取り組み」は70を超える。注目すべきは、学生と教員有志が共同で声明を発表したり集会を開いたりしているケースが多いことだ。
いつもは「いまの学生は本を読まない」などと苦言を呈しがちな教員が、神妙な顔でSNSの使い方などを学生から教わり冒頭のような会話を交わしている姿は、ある意味で微笑ましい。しかし、逆に考えれば事態はそこまで切迫しているということでもある。
大学にとっての問題は、安全保障関連法案だけではない。
文部科学省は全国86の国立大学に対し、今ある学部や大学院の積極的な再編を求める通知を出したが、とくに教員養成系と人文社会科学系の学部・大学院には「組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」ことが求められている。
また、衆議院憲法審査会において各党の推薦する3人の憲法学者が、安保法案を「憲法違反」だと明言したにもかかわらず、政府はそれを無視する形で衆議院での強行採決に踏み切った。
相次ぐ学問や知への愚弄に怒りを感じている大学教員も多い。
そして、キリスト教精神に基づいて教育を行うミッション系大学にとっては、
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