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[15]ゴルフで延ばす! 健康寿命(上)

会社の外に居場所がありますか?

山口信吾 ゴルフ作家

「人とのつながり」が健康寿命を決める

 日本は世界有数の長寿国である。2014年の日本人の平均寿命は、女性が86.83歳、男性が80.50歳で、ともに過去最高を更新。女性は3年連続の世界一であり、男性は前年の世界4位から3位になった。

 ただ、平均寿命の延びを手放しで喜んではいられない。日常生活を支障なく暮らせる期間、すなわち「健康寿命」は、2013年で女性は74.21歳、男性は71.19歳にすぎない。平均寿命と健康寿命の差は9~12年に及ぶのだ。自立した幸せな老後を送るためにも、医療費・介護費を抑えて社会保険制度を維持するためにも、健康寿命を延ばすことが大きな課題になっている。

 健康寿命についての興味深い実態調査がある。

 東京都健康長寿医療センター研究所、東京大学、米ミシガン大学が共同して1987年から20数年かけて、日本全国から無作為に抽出した高齢者約6千人の生活を追跡調査したのだ。これによれば、高齢男性の健康寿命には、喫煙の有無が大きく影響している。「タバコは万病のもと」といわれるとおりである。日本人男性の喫煙率は先進諸国のなかで突出して高い34.1%であり、米国の15.9%の2倍以上もある。喫煙率を下げれば日本人男性の健康寿命は確実に延びる。

 さらにもうひとつ重要なことが明らかになった。高齢男性の健康寿命は、「団体・グループへの参加の有無」と非常に関係が深いのだ。自治会、趣味・スポーツ・学習、ボランティアなど、何かしらの団体・グループに参加して活動している男性は、健康に長生きしていることがわかったのである。「人とのつながり」を豊かにするのが、健康寿命を延ばす決め手なのだ。

 この調査によれば、女性はどの年齢層でも後続世代のほうが人付き合いの頻度が増加しているが、男性は逆で、どの年齢層でも年をとるほど人付き合いが減少している。高齢男性の人のつながりの希薄化が大きな問題である。

 朝仕事に出かけて、夜帰宅する生活を何十年も続けてきた男性は、定年退職すると、それまでの職場を中心とした人間関係を断たれてしまう。地域には人間的なつながりはなく、自宅にも「居場所」がない状態になってしまうのだ。

 定年退職した多くの男性が、「することがない、行く場所がない、話す人がいない」と口をそろえて言う。そのうち何かやろうと思いながら家でテレビを観たり、ネットサーフィンをしたり、時々犬の散歩に行くとかジムに行くという生活をしている定年退職者が多い。家にジッとしていることほどつらいことはないし、元気な身体や能力をもてあましていると、頭も筋肉も早々に衰えてしまう。

 定年を迎えてから、その後のあり余る時間をどう過ごすかについて何の考えも持っていないことに、はたと気づく人が多い。仕事一途な人ほど、人生の最終章について考えていないのだ。会社から定年によって強制退去を命じられ、はっと気が付けば居場所がない。

 会社の外にもいくつかの居場所が必要なのだ。在職中から何かしらの団体・グループに参加して意欲的に活動し、会社の外で人間関係の輪を広げておくのだ。定年後に生き生きと過ごしているのは、現役中から会社の外に居場所があった人である。現役中に、週末や祝日に家でごろごろしていた人ほど、定年後に居場所がなくて苦労することになる。

 同窓生や同期生との付き合いは楽しいが、同じ時代の空気を吸った人間の付き合いは回顧的になりがちで刺激が少ない。その点、趣味やボランティアの世界では世代を超えた付き合いができる。若い世代と付き合えば元気を、人生の先達と付き合えば生きるための指針をもらえる。

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