2015年10月05日
米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が9月16日、日本の国債格付け(ソブリン・レーティング)を1段階引き下げた。ムーディーズが昨年12月、フィッチ・レーティングスが今年4月に、S&Pに先行してAA-からA+の水準に下げており、これで世界の3大格付け会社がそろって日本の国債格付けを下げたことになる。
G7諸国ではイタリアを除いて最も低く、近隣の中国や韓国よりも低い水準になった。S&Pの格下げ理由を読むと、日本銀行の異次元の量的緩和政策の後、「日本の財政は大丈夫なのか」と問いかけているようである。
麻生太郎財務相は18日の閣議後会見で、「格下げで(長期)金利がどれだけ上がったか。市場は反応していない。格付け会社の影響力がなくなった」と述べている。日本銀行による国債買い入れもあり、確かに足元、日本国債の市場価格や利回りの変化を危惧する必要はないのだろう。
また国際金融市場は7月から、中国株安、ギリシャ危機の再燃、米国の利上げ観測の台頭などから、すでに混乱しており、そうした要因に比べると、日本国債の格下げはインパクト不足である。つまり国際金融市場に対する「日本国債の格付けの影響力がなくなった」と言えるだろう。世界的な市場の混乱に助けられた面が否めない。
ただし、日本の国債の満期までの平均残存期間は3月時点で8年である。10年以上も17・7%含まれている。格下げが与えた短期的な市場の影響はさておき、そもそも国債格付けは長期的に国債が債務不履行(デフォルト)リスクを簡易に示す指標である。
BBまで下がれば、投機的水準とされて、金融機関は通常、保有しにくくなる水準である。おそらくイタリア同様のBBB水準まで低下することがあれば、日本経済に深刻な影響を与えるだろう。
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