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米国の株価調整の先を考えよう

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

利上げ尚早論の大合唱

 世界の経済・金融資本市場関係者の間では、相も変わらず、米国連銀が政策金利(フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準)の引き上げに踏み切るか否かに、最大の関心が集まっている。

 興味深いのは、国際場裏での利上げ尚早論の大合唱で、米国連銀の金融政策の裁量権に縛りが掛かったかのような状況になっていることである。

 去る10月9日に、南米ペルーの首都リマで開催された国際通貨金融委員会(IMFC)コミュニケは、『先進国は、適切な場合に、中央銀行のマンデートと整合的な形で、緩和的な金融政策スタンスを維持するべきである』と、米国連銀の利上げに反対する強烈な牽制球かと取られる表現を盛り込んだ。

 政策金利引き上げ反対派の関心は、経済政策の担当者・経験者の間では、中国などの新興経済圏の景況の悪化が先進経済圏の景況にもマイナスの影響を与えること、金融資本市場関係者の間では、株式相場、外国為替などの動向に集中している。

 注目すべきは、今年5月下旬以降では、米国の政策金利の引き上げが実際になくても、その引き上げ観測だけで、ニューヨークなどの株式相場の大幅な下方調整が始まったことである。確かに、政策金利が実際に引き上げられれば、多くの経済・金融資本市場関係者が懸念するように、この下方調整圧力は大きくなろう。

 しかし、ここで考えるべき点は、米国連銀の政策金利の引き上げが無ければ、米国などの 株価水準が、最近5カ月間近くの下降モーメンタムを逆転し、上記の今年5月のピークを 越えて、安定的な上昇モーメンタムを回復するか否かであろう。

株価の下方調整局面に突入か

 以上の設問を考える鍵は、米国の株価水準がピークを付けた2015年第2四半期の企業
株式時価総額などの株価指標が、GDPなどの米国経済の活動規模に比べて、相対的に如何なる位置にいたかであろう。

 米国企業株式時価総額(米国の資金循環表内の数字)の対名目GDP(米国政府商務省経済分析局の推計値)比率は、今年第2四半期には211%と、今世紀初頭のドットコム・バブル破裂前の204%、2007年半ばのサブプライム危機勃発直前の183%よりも高水準であった。

 以上の比率が史上最高値に達していたことを前提とすると、米国連銀の政策金利の引き上げを待たずに、米国などの株式市場は株価の下方調整局面に突入し、世界の経済・金融資本市場関係者は、その渦中にあると見ても、何ら不思議ではないということになる。 

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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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