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移行期に入った中国経済 

今後「先進国化」していけるかどうかはかなり不透明だ

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

(Ⅰ)成長率に懐疑的見方が広がる

 2015年6月始めには5000円を上回っていた上海総合指数は6月末から暴落し、一時3000円を切り、現在も3300~400円のレンジで推移している。この株価暴落を期に中国経済への懸念が拡大し、世界経済全体を揺さぶることになった。

 2015年6月~9月に利上げを予定していた米国連邦準備制度理事会(FRB)も世界経済の混乱を理由に利上げを見送ることになった。

 ジャネット・イエレン議長は米国経済が順調に推移すれば年内には利上げを開始するとの見方を示したが、9月の非農業部門の雇用者数の増加は14.2万人と市場予想の20.1万人を大きく下回ったのだった。中国経済の失速はアメリカ経済にも影響し、年内利上げは難しいのではないかという見方が次第に強くなってきている。

 中国政府は2015年上半期のGDPの成長率は7.0%と発表しているが、市場でのこの数字に対する懐疑的見方が広がっている。

大連で9月10日開かれた「夏季ダボス会議」の開幕式で演説する李克強首相。中国経済への懸念の打ち消しに終始した拡大大連で9月10日開かれた「夏季ダボス会議」の開幕式で演説する李克強首相。中国経済への懸念の打ち消しに終始した

 最も信頼性の高いとされているのはいわゆる「李克強指数」(ⅰ電力消費量・ⅱ銀行融資・ⅲ鉄道輸送量の三項目)のうち電力消費量・鉄道輸送量は前者が横ばい、後者がマイナスといった状況が続いている。

 この指数で見る限り、7%成長という当局の発表は信頼できないということになる。市場は2015年に入って成長率は7%を大きく下回っていると見ている。

 ちなみにIMFの最新の「世界経済見直し」(2015年10月)では2015年の中国の成長率は6.8%、2016年は6.3%になっている。2013年7.7%、2014年の7.3%から、いよいよ6%台に成長率が低下するとの予測だ。

(Ⅱ)かなりの困難を伴う移行期

 1979年から2008年の中国の平均成長率は9.8%と10%に近い成長率を維持してきたのだ。この時期の中国の成長率は世界ナンバーワン。2位のシンガポールは7.0%、3位のベトナムは6.6%だ。

 ちなみこの時期のアメリカの平均成長率は2.9%、日本のそれは2.4%だった。10%前後の成長は2011年まで続くが(2009年9.21%、2010年10.41%、2011年9.3%)2012年から成長率は7%台に入り、2015年からは6%台に下落するとの予測なのだ。

 1979年から2011年は中国の高度成長期、2012年からは安定成長期に移行したということなのだろう。日本経済は1973~74年に高度成長期から安定成長期に移行しているが、ほぼ40年遅れて中国経済も安定成長期に入ったということなのだ。移行はかなりの困難を伴う。1974年、日本の経済成長率は73年の5.1%からマイナス0.5%に落ち込んでいる。75年には4.0%まで戻すのだが、物価も大きく上昇し消費者物価指数は1973年には11.7%、1974年には23.2%上昇したのだった。いわゆる「狂乱物価」の時代だったのだ。

 つまり、移行期というのはかなり難しい時期で様々な混乱を引き起こす可能性があるということなのだろう。現在の中国経済はまさにそういう状況にある。高度成長期の政策は一気には転換せず、バブルが崩壊する等、負の動きが各所で現出する。高度成長が終わったこともあり税収も大きく減少し、日本では1975年度から赤字国債が発行されるようになり、その後財政赤字が続いていくことになったのだった。

 高度成長から安定成長への移行期には様々な構造改革が必要になる。日本も1980年半ば以降構造改革を積極的に進めていった。1985年4月には日本電信電話公社が民営化され、1987年には日本国有鉄道が民営化されている。1995年5月には行政改革委員会の下に規制改革小委員会が設置され、1990年代後半の橋本龍太郎内閣、2000年代始めの小泉純一郎内閣では郵政民営化や企業法の整備等が行われたのだった。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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