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中国経済の成長率7%割れをグラフで読み解く

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

景況悪化をようやく認めた中国政府

 中国経済の実質GDP成長率が、2015年第3四半期(7月から9月期)には、前年同期比で7・0%を割り込み、6・9%になったとの「公式推計値」を、中国政府国家統計局が、10月19日(月)に公表したことが、世界中の経済・金融資本市場関係者の間で、大きな波紋を呼んだ。

 本稿では、その波紋が、世界経済、日本経済に対して意味すること、特に、日本の対外貿易に対する影響を、少し多めの10点のグラフを眺めながら概観しよう。

 中国経済の実質GDP成長率は、今年第1四半期は7・0%、第2四半期は7・0%、第1~第3四半期の通算では6・9%であったという。中国政府の2015年の経済成長率(実質GDP成長率)の公式目標は7・0%である。

 大方の中国経済の観察者は、公式目標の実現は無理と見ていたので、中国政府自身も自国経済の景況の悪化を、ようやくにして認めたかというのが実感であったろう。

 2015年第3四半期が終了してから20日も経たない内に、中国経済のように大きな国民経済の当該期間の実質GDP成長率を公表するのは、なかなか勇気の要ることである。公表された数値は、中国当局の希望的観測も入った「推計値」に過ぎないと受け止められよう。

 日本や米国のように、先進経済国とされる諸国でも、GDP統計の性格上から、推計誤差が非常に大きいものである。ここでは、中国政府による最近2年3四半期の実質GDP成長率の数字を、以下のグラフで眺められたい。

中国経済 実質GDP・前年同期比成長率(%) 2013年Q1~2015年Q3 四半期別拡大中国経済 実質GDP・前年同期比成長率(%) 2013年Q1~2015年Q3 四半期別

1991年以降、日米両国を大きく上回る推移を示してきた中国

 その次には、下掲グラフで、世界銀行による1960年以降の中国経済の実質GDP成長率の推計値を、四半期別ではなく、年次別で、かつ米国と日本と比較しながら眺めよう。

 1991年以降の中国は、日米両国を一貫して大きく上回る推移を示して来たことを、視覚的に受け止められたい。

 中国経済の実質GDP成長率が、2015年第1~第3四半期通算では6・9%であったと言っても、2015年第1~第2四半期(今年前半)に対応する数字が、日本経済では全く成長無しの0・0%、好調とされる米国経済でも、2・8%に過ぎなかったことに比べると、中国の数字が額面通りであれば、依然として非常に高い水準であったと言えよう。

中国、米国、日本の実質GDP 成長率 1960年-2014年拡大中国、米国、日本の実質GDP 成長率 1960年-2014年

 中国経済の景況の変化が、世界中で関心を払われるのは、その経済活動の実質的な規模が、文句なく世界のトップに立っているからである。

 しかし、前記と同じ世界銀行のデータによると、2014年の名目GDP(=経常価格で評価したGDP)を、同年のドルの為替レートでドル換算すると、米国が17・4兆ドル、中国が10・4兆ドル、日本が4・6兆ドルであった。米国は中国の1・67倍、中国は日本の2・26倍であった。経常価格による評価では、米国は、依然として中国を大きく凌駕しているように見える。中国は日本の2倍以上に膨張していることに、日本国民は留意することが肝要であろう。

 なお、経常価格により評価されたGDP(ドル換算)の規模は、ドルに対する人民元、日本円の為替レートの変化で大きく変わり得ることに留意されたい。ドル安になれば、中国、日本の経常価格評価のGDPは膨張し、反対にドル高になれば、縮小する訳である。

中国、米国、日本のGDP 兆ドル換算・経常価格評価 1960年~2014年拡大中国、米国、日本のGDP 兆ドル換算・経常価格評価 1960年~2014年

実質的な経済活動の規模で、米中日の経済バランスを見る

 上記の米中日三カ国の経済バランスも、同じドルで米国、中国、日本の生産物・サービスを何ドル分買えるかという物差し(購買力平価)で評価・比較すると、全く異なる姿が浮かび上がる。実質的な経済活動の規模で、米中日三カ国の経済バランスを見るのである。

 購買力平価で評価したGDPの規模は、2014年時点で、中国が米国、欧州連合を抜き去り、インドが第4位、日本が第5位という。この事は、国際通貨基金が昨年10月に予測の形で公表し、世界の経済・金融資本市場関係者の間では大きな反響を呼んだ。

 経済などの世界情勢を統計的に把握する作業をし、その結果を公表している米国連邦政府・中央情報局(CIA)も、米国経済が、世界第3位の実質的な規模に後退したことを、公式に認めている。

 米国の政治経済エリートは、19世紀の末から百年以上も、米国経済の規模が世界一の座にあることを当たり前に感じていただろう。したがって、内心では、かなりのショックであろう。この事情は、1960年代初頭以降の半世紀は、アジア第一の座を誇っていたが、中国に抜かれて、アジア第二に後退した日本でも同じであろう。

米国連邦政府・中央情報局(CIA)、The World Factbook
https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/

世界の各国・各地域のGDP 兆ドル・購買力平価 1990年~2014年、2015年~2019年(予測)拡大世界の各国・各地域のGDP 兆ドル・購買力平価 1990年~2014年、2015年~2019年(予測)

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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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