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中国リスクの台頭か

 中国経済の成長速度が減速していることが10月19日に、国家統計局が発表した2015年7-9月期の実質GDP成長率で確認された。同期の実質成長率は前年同期比6.9%と、中国政府の今年の目標値7%を下回った(図1)。7%割れは6年半ぶりである。これまで中国政府は7%を社会安定の目安としてきただけに、この指標で中国リスクが台頭したとの指摘も出ている。

中国の実質GDP成長率(四半期)の推移拡大中国の実質GDP成長率(四半期)の推移

 産業別にみると、金融業(16.1%)やその他サービス業(9.5%)が堅調である(表1)。

産業別の中国GDPの構成比・成長率拡大産業別の中国GDPの構成比・成長率

 他方、工業(5.8%)、建設業(5.8%)、不動産業(4.9%)などの成長が鈍化している。産業別の成長のばらつきが大きい。発表された統計からは金融業の好調さが目立つ。上海株価指数が6月中旬の高値から急落したが、消費やサービスの影響はGDPからは確認しにくい。今後の影響を見極める必要があるだろう。

7%を成長率目標にする必要はない

 これまで、確かに社会の安定には、景気や経済成長の確保が不可欠であった。1989年の天安門事件当時は消費者物価の上昇が前年比で二桁で実質成長率の伸びを鈍化させた。

 ただし、すでに所得水準が上昇して、かなり豊かになった中国で、依然として、7%を社会安定の目安として拘る必要はないと思う。中国共産党や中国政府の幹部が今後、7%に拘らない姿勢を発表したGDPを通じて示したとしたら、むしろ歓迎すべきことなのかもしれない。

 2015年7-9月期の地域別成長率はまだ公表されていないものの、成長率や成長の必要性は地域で大きく違う。4-6月期では、重慶市が前年同期比11.0%、貴州省が同10.7%の二桁成長に対して、遼寧省が同2.6%、山西省が同2.7%の伸びにとどまっていた。

上海など沿岸部は先進国並みの経済水準

 産業別で、これまで中国の成長を牽引してきた工業、建設業、不動産業の成長率が低い。中国は政治的には統一された国であるが、経済的には地域や都市と農村で、格差が少ない日本から見ると、同じ国とは思えないような格差を抱えている。

 一つの国に「先進国と途上国」が同居していると考えるべきだ。深セン市、上海市、北京市、天津市、広州市など沿岸部の大都市の一人当たりGDP、つまり経済水準は台湾や韓国に肉薄している(先進国水準)。こうした地域では総じて、消費やサービス業など第3次産業のウエイトも高い。先進国水準の地域で成長率が鈍化するのは当然の経済現象で、社会を不安定化させる要因にはなりにくい。

 他方、土地公有制の中国では、不動産開発は地方政府の財源に直結するだけに、不動産開発の停滞と、工業の不振が重なり、遼寧省や吉林省など東北部の経済に影響を与えている可能性が高い。

 中国の場合、社会保障制度も戸籍制度によって規定されている。地域格差を是正する財政制度(日本なら地方交付税)、相続税が未整備で、個人や法人所得の捕捉・課税にも課題を抱えている。経済成長率の高低に一喜一憂するのではなく、財政・税制・社会保障制度など所得再分配制度の拡充が必要な時を迎えている。

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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

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